松山英樹 日本人初「マスターズ」制覇の直前にささやかれていた〝懸念〟

松山英樹(ロイター)

【取材の裏側 現場ノート】男子ゴルフの松山英樹(29=LEXUS)は東京五輪で〝銅メダルプレーオフ〟の末、4位に終わった。日本勢の金メダルラッシュに乗ることはできなかったが、4月に日本人初の「マスターズ」制覇は、ゴルフという競技の枠を超えて日本スポーツ界最大級の快挙と言っていいだろう。

そんな「マスターズ」で松山は2位に4打差をつける単独首位で最終日を迎えた。セーフティーリードではないものの、絶対的に有利な位置だ。そんな日を前にして日本ゴルフツアー機構(JGTO)元会長の小泉直氏(現顧問)が「今の松山君なら大丈夫だと思う」と前置きした上でこんな懸念を口にしていた。

「USGA(全米ゴルフ協会)などが松山君を邪魔するために優しいところにピンを切って、日本人にマスターズを勝たせないようにするという懸念はある。通常の考え方でピンを切れば彼は優勝するだろうが、ピンが優しくなると、10アンダーくらい出してくる選手がいておもかしくないし、逆転の可能性もある」

無欲で〝攻めダルマ〟となった選手はとんでもないスコアを出す可能性があり、ピンが優しければなおさらだ。その一方で優勝争いの渦中にいる選手は互いにけん制し合い、スコアが伸び悩む琴もあり得る。プロトーナメントでは最終日のビッグスコアで大逆転優勝を勝ち取るというケースは少なくない。

ただ「マスターズ」最終日のピンポジションは、特別優しかったわけではなく、松山の優勝後に小泉氏は「ピンポジは普通だったね」と言った。それは松山の存在が米ツアーで認められている証し。フェデックスランキング上位30人しか出場できない「ツアー選手権」に7年連続出場中など積み上げてきた実績を見れば、一目瞭然だ。

今後はマスターズ王者としてさらなる地位を米ツアーで確立してもらいたい。

(ゴルフ担当・森下久)

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