1年目から毎年のように怪我も10年目にベストナイン&GG賞を受賞
ロッテの切り込み隊長として活躍する荻野貴司外野手。2009年秋のドラフト会議で1位指名され、ルーキーイヤーの2010年は「12球団で最も速い」とも評された俊足を武器に旋風を巻き起こした。今季はリーグ4位の打率.305をマークするなど、プロ12年目にしてますます存在感を高める魅力に改めて迫りたい。
荻野を語る時につきまとうのが怪我。2010年は開幕から46試合で25盗塁と驚異の脚力を見せたが、右膝の半月板損傷で戦線離脱。ロッテはその年、リーグ3位からクライマックスシリーズを勝ち上がり、日本シリーズを制覇したが、胴上げの場に荻野はいなかった。
その後も、肉離れ、ハムストリング損傷、脱臼と毎年のように怪我に苦しんだ。2017年のオフシーズンには「怪我をゼロに」という願いも込めて背番号を「4」から「0」に変更する。しかし、2018年には初のオールスター出場目前で右手を骨折し出場辞退する不運にも見舞われた。
しかし、荻野は決して屈しない。特に“らしさ”を発揮したのは右手骨折から復帰した2019年だった。プロ10年目にして初の規定打席に到達し、西武・森友哉捕手、オリックス・吉田正尚外野手に続くリーグ3位の打率.315をマークした。さらに盗塁も自己最多の28個を記録し、ベストナインとゴールデングラブ賞も受賞。まさに「七転び八起き」を体現した。
今季は球団初の12年連続2桁盗塁、前半戦はリーグ3位の打率.307
荻野といえば俊足が注目されることが多いが、打撃面も光る。前半戦終了時で339打数(リーグ2位)、104安打(同2位)、打率.307(同3位)、56得点(同2位)。バットを短く持ち、腰をくるっと回して打つスタイルで、快音を響かせる。
身長は172センチ。野球選手としては小柄ながらパンチ力も備え、今季は3本の先頭打者弾を含む6本塁打を放っている。佐々木朗希投手が初先発した5月16日の西武戦では初回にレオネス・マーティン外野手とアベック弾を放ち、恐怖の1、2番コンビの存在感を知らしめた。
35歳の荻野はチームメートへのアドバイスも欠かさない。5月22日の楽天戦では新外国人のアデイニー・エチェバリア内野手に打撃のアドバイス。エチェバリアはその直後の打席で二塁打を放った。
6月22日には球団史上初の12年連続2桁盗塁を記録。プロ野球でも史上4人目の偉業だった。打撃に加えて走力も衰えを知らず、ますます輝きを放つ荻野が悲願のリーグ制覇に向けチームを先導できるか。スピードスターにさらなる期待が募る。(「パ・リーグ インサイト」下村琴葉)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)