今季6度目のTOP10フィニッシュも苦笑いの佐藤琢磨「フラストレーションの溜まるレースが続いている」

 ナッシュビル市街地でのクレイジーなレース後、NTTインディカー・シリーズはインディカーの聖地インディアナポリスに戻り、今年2回目のGPコースでレースが行われた。

 レース名はBIG MACHINE SPIKED COOLERS GRAND PRIXと名付けられ、今回はNASCARのカップカー、Xfinityシリーズとも併催だ。そのためタイムスケジュールもかなり変則的なものとなり、インディカーは土曜日に決勝レースを行った。

 5月に行われたGPコースのレースでは、ロマン・グロージャン(デイル・コイン)が初ポールポジションを獲得し、若いリナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシング)が初優勝というエポックメイキングなレースだったが、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの佐藤琢磨は16位でレースを終えていた。

 金曜日15時からのプラクティスは1時間設けられ、セッションの最後にレッドタイヤを履くチャンスがあったが、琢磨はまたもやトラフィックに引っかかりタイムが出ずに24番手の憂き目にあう。

 午後7時からとなった予選では、チームメイトのグラハム・レイホール、そしてこのレースにスポット参戦するクリスチャン・ルンガーとプラクティスでのデータをシェアして臨んだ。

 過去のレースから比較的コンサバティブなセッティングにした琢磨とグラハムは16番手、17番手という位置にとどまったが、積極的に攻めたセッティングをしたというルンガーはデビュー戦にして予選4番手を獲得し話題をさらった。

 このコースでは予選タイムも相変わらず僅差で、1分11秒4174でグループ8番手に終わったものの0.2秒縮めることが出来ればQ1を突破出来ていたのだが……。

「プラクティスの最後にレッドタイヤをきちんと試せなくて手探りな感じでしたが、45号車のクリスチャンがかなり攻めたセッティングでうまくいったみたいですね。僕とグラハムはちょっとコンサバティブなセッティングでした」

「このコースではなかなかポジションを上げるのが大変なので、明日のレースはタイヤ戦略をうまく考えないといけないですね」と琢磨。

 琢磨はナッシュビルでは20周足らずでレースを終えてしまったが、今年は完走すれば必ずポジションを上げており、85周のレースをどう攻略するかが見どころ。

 朝のウォームアップでは6番手のタイムをマークし決勝に向けてマシンの方向性を見出した様子だった。

「ウォームアップは全体的に見ればトップ10に入れるくらいのスピードだったと思います。ブラックタイヤでスタートすると思いますけど、どのタイミングでレッドにするかは、チームと考えたいですね」

 口調にも少し余裕が出てきただろうか?

 レースがスタートしポールポジションのパト・オワード(アロウ・マクラーレンSP)が先頭でターン1に入っていく。

 琢磨はジョゼフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)のエンジン交換ペナルティもあってひとつ繰り上がり15番手からのスタートになった。

ブラックタイヤでスタートした佐藤琢磨

 オープニングラップはシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)やライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)らとポジション争いをし、1周目を終えたが翌周には15番手とポジションをふたつ落とす。

「ブラックで行ったのでタイヤの温まりが遅くてレッドタイヤのドライバーたちを抑えることができなかった」と言い、16番手からの追い上げモードとなった。

 チームは9周目に後方のスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)がピットに入ったのを見るや、翌周に琢磨をピットに呼びレッドタイヤに交換した。

 このピットインでハンター-レイのアンダーカットにも成功し、レッドタイヤでペースを戻した琢磨は、トラフィックに引っかかることもなく順位を上げ始める。

 この戦略がポジションにつながり始めたのは、レースの半分を過ぎた頃で、34周目に2度目のピットインを終えた琢磨は、46周目にはチームメイトのルンガーをかわして11番手に。58周目にはコナー・デイリー(エド・カーペンター・レーシング)もかわしてトップ10に入った。

デビュー戦のルンガーを従え走行する佐藤琢磨

 最後のピットインは60周目に行い、ポイントリーダーのアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ)のリタイアで68周目には9番手、パジェノーのコースオフで72周目には8番手となっていた。

 前を行くのはチームメイトのグラハムだったが、後ろから急追してきたのはジョゼフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)だった。

レース終盤、ニューガーデンとバトルする佐藤琢磨

 リナス・ヴィーケイのスピンで77~78周の間にイエローが出され、リスタートから迫ってきたニューガーデンは、ラスト2周となったターン1で琢磨の左後ろから接触!

 琢磨は姿勢を乱してポジションを落とし、マーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ)にも抜かれ10番手までポジションを落とした。マシンに大きなダメージはなかったものの、そのまま残り1周を走り切って10位でチェッカーを受けた。

「ブラックタイヤではポジションを上げられなかったけれども、レッドタイヤにしてからはアンダーカットもできたし、自力で何台もパスできて力強い走りができたと思います。でもレッドにしたタイミングで燃料をセーブしなくちゃいけなかったり、そこはもうちょっとうまくやりたかった」

「最後はペースの良かったニューガーデンに当てられちゃったけど、8位で完走したかったですね。フラストレーションの溜まるレースが続いてますけど、次のゲートウェイはいい思い出のあるトラックですし、そこで気分転換して、最後の西海岸3連戦に行きたいですね」とレースを振り返った。

 来週のゲートウェイは2019年に勝利を挙げ、2020年も表彰台を獲得し相性も良いトラックだ。この3連戦の中で最も期待して良いだろう。

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