【宇宙クイズ】謎の現象「ガンマ線バースト」観測史上一番近いものは何光年先だった?

観測史上、地球の一番近くで発生した「ガンマ線バースト」までの距離は何光年?

1.「約50万光年」 2.「約1億1000万光年」 3.「約15億8000万光年」

■ガンマ線バーストについての解説

ガンマ線バースト(gamma-ray burst : GRB)』は、ガンマ線が数秒から数時間という比較的短時間で爆発的に放出される現象です。そのエネルギーは、太陽が100億年続く生涯の間に放出するエネルギーよりも大きいと言われています。

冷戦時代、アメリカとソビエト連邦は原子力や宇宙開発といったテクノロジーの進展を競い合っており、アメリカはソ連が実施した核実験による放射線を検知すための人工衛星「ヴェラ」を打ち上げていました。そんな中、地球上ではなく太陽系の外で発生したと思われるガンマ線バーストが、ヴェラによって1967年7月に初めて検出されました。しかし、ガンマ線バーストの発生源はどこか、その猛烈な爆発現象はどのような仕組みで発生するのかといった研究は、長らく捗りませんでした。

1990年代に入ると観測機器の精度が向上し、1日に2、3個のガンマ線バーストが検出可能になります。1991年に打ち上げられたガンマ線観測衛星「コンプトン」の観測では、ガンマ線バーストが宇宙のあらゆる方向で発生していることが判明。1990年代後半にはガンマ線バーストにともなう可視光の残光も捉えることが出来るようになりました。こうした進歩により、ガンマ線バーストの多くが何十億光年も離れた遠い宇宙で起きていることが突き止められました。

【▲ 超新星爆発寸前に短時間だけガンマ線を放出する恒星を描いた想像図(Credit: International Gemini Observatory/NOIRLab/NSF/AURA/J. da Silva, Image processing: M. Zamani (NSF’s NOIRLab))】

ガンマ線バーストは継続時間で区別されていて、2秒より長いものはロングガンマ線バースト、2秒より短いものはショートガンマ線バーストと呼ばれています。ロングガンマ線バーストは、太陽よりもはるかに重い大質量星が超新星爆発を起こす直前、その星の中心部分で誕生したブラックホールから二手に放出されたジェットが恒星を突き破った時に放出されると考えられています。いっぽう、ショートガンマ線バーストは、2つの中性子星が合体するときに発生すると考えられています。

次の動画はアメリカ航空宇宙局(NASA)が作成した、2013年4月27日に検出されたガンマ線バースト「GRB 130427A」をイメージしたものです。ガンマ線バーストは指向性が高く、まるでビームのように放出されることがわかります。

なお、1つの銀河で数百万年に一度しか発生しないと言われるガンマ線バーストですが、過去の地球がその直撃を受けた可能性があるという研究結果を、NASAとカンザス大学が2005年に発表しました。

今から約4億5000万年前、古生代オルドビス紀の終わり頃に起きた大量絶滅の原因が、およそ6000光年先で発生した超新星爆発によるガンマ線バーストだったかもしれないというのです。オルドビス紀は生物の種類が爆発的に増えたカンブリア紀の次にあたり、大半の生物が暮らしていた海中では三葉虫が繁栄し、硬い外骨格を持つ魚類(甲冑魚)が登場した時代です。オルドビス紀の末期には、当時生息していた全ての生物種のうち85パーセントが絶滅したと考えられています。

関連:デボン紀後期の大量絶滅は数十光年先で起きた超新星爆発が原因かもしれない

【答え】一番近いガンマ線バーストは…

正解は、2.「約1億1000万光年」です。

これは1998年4月25日に検出されたガンマ線バースト「GRB 980425」までの距離(赤方偏移0.008)で、その翌日にはほぼ同じ方向で超新星「SN 1998bw」が見つかっています。GRB 980425とSN 1998bwの発見により、ガンマ線バーストと超新星が初めて関連付けられました

【▲ ガンマ線バーストの観測のイメージ図(Credit: Superbossa.com and Alice Donini)】

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Image Credit: Shutterstock
Source: NASA
参考: Wikipedia 「ガンマ線バーストの一覧」より
文/sorae編集部

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