田原俊彦の魅力が凝縮された「誘惑スレスレ」トシちゃんはずっとスターであり続けた  田原俊彦「オリジナル・シングル・コレクション 1980-2021」発売間近!

表舞台から遠ざかっていても、陽気なキャラクターは変わらない!

「田原俊彦はあまりに過小評価されてきた。アイドル出身だからなのか、ジャニーズ事務所を退所したからなのかはわからない。一時、田原がまるで芸能界に存在しなかったような扱いを受けていたことは事実だ」

これは岡野誠さん著『田原俊彦論』(青弓社)の一節だ。かの有名な「ビッグ」発言(1994年)のあと、田原俊彦のメディア露出は激減した。かつてのスターが時代の流れと共に需要を失っていくのは芸能界の宿命だが、それにしても田原俊彦(以下、トシちゃん)の場合は極端だった。

1986年生まれの私がトシちゃんの栄光を知ったのは、それからずいぶん後になってからのことだ。当時はまだインターネットも普及しておらず、Youtubeもなかったテレビ一強の時代。全盛期を知らない世代からすれば、田原俊彦は岡野さんが著したような「存在しない」に等しい人物だったと言えるのかもしれない。

時は流れ、トシちゃんを再び表舞台で見る機会が増えたのが2010年代の初頭のことだ。爆笑問題の失礼な質問にも大喜びで応じるなど、その変わらぬ陽気なキャラクターが人気を博し、再評価の機運が高まっていった。

ビッグなのに、それを感じさせない田原俊彦の親しみやすさ

1980~90年代に頭角を現し、活躍したタレント達が “大御所” として君臨するようになった2010年代以降の芸能界。その中にあってトシちゃんの “軽さ” はいい意味で異質だった。「ビッグ」なのに、それを感じさせない親しみやすさ。そもそも「トシちゃん」という愛称がここまで違和感なく馴染む中高年はいないだろう。

毎回異なる美女を助手席に乗せ、真っ赤なポルシェでドライブデートを楽しんでいるのも “ザ・芸能人” “ザ・スター” という感じがして微笑ましい。

この人のどこか浮世離れした雰囲気は一体何なのだ? 興味をもって調べれば調べるほど、トシちゃんの魅力にどんどんハマっていく自分がいた。トレードマークともいえる「アハハハ」という笑い方や、日本人離れした足の長さを生かした高いダンススキル… そのアンバランスさがとにかくクセになる。

いや、むしろアンバランスだからこそ安心できるのかもしれない。非の打ち所があるからこそ、嫌みより愛嬌が優る… そんな絶妙な塩梅。

田原俊彦の魅力が炸裂!ディスコティックな「誘惑スレスレ」

数あるヒット曲のなかでも、とりわけトシちゃんの魅力が炸裂しているのが11枚目のシングル「誘惑スレスレ」だ。ファンシー路線をきわめた前作「NINJIN娘」に対し、今作はトシちゃんの王道ともいえるディスコティックなナンバーだ。

 男は顔じゃないよ ハートさ  女も顔じゃないよ ノリだよ

初っ端に登場するこのインパクトある一節だけで “つかみはオーケー”。キレッキレなダンスをしながらこのすっ飛んだ歌詞を真剣に歌ってサマになる成人男性は、日本広しと言えどもトシちゃんくらいのものだろう。トシちゃんが歌うと一級の “アイドル歌謡” に化けるのだからズルい。2番のBメロでは、

 愛しているのさ 好きだよ

… とカメラ目線でセリフ調につぶやき、客席から悲鳴にも似た黄色い歓声が起こるのがお約束。そしてラストでは両足を180度に開脚しての大ジャンプを披露。カッコ良さ、ノリの良さ、キレのあるダンス…… この3分25秒間にアイドル・田原俊彦の魅力がすべて凝縮されているといっても過言ではなかろう。

突き進む“生涯アイドル”の道、田原俊彦の変わらぬ若さとサービス精神

CS歌謡ポップスチャンネルの人気番組『クリス松村の注文の多いレコード店』でクリス氏が言及していたが、これ以降、トシちゃんのシングルは “カッコ良さ” に力点を置いた曲がメインになっていく。いつまでも “可愛いトシちゃん” ではない。誰もがそうであるように、トシちゃんにもまた大人になる時が来たのである。

数年後、オールバックの似合うセクシーな大人になったトシちゃんは俳優として成功を収め、視聴率30%超の主演ドラマ『教師びんびん物語』とその主題歌「抱きしめてTONIGHT」が併せて大ヒット! … と、まさに芸能界で栄華を極めることになる。

また驚くべきは表舞台から遠ざかっていた間もスタイルやダンスのキレを維持し、スターであり続けたことだ。今年2月には還暦を迎えたが、ステージでは安定の足上げを披露をするなど、変わらぬ若さとサービス精神で生涯アイドルの道を突き進んでいる。

どんな境遇になろうとも、前向きに “ハート” と “ノリ” を磨き続けてきたエンターテイナー。つい塞ぎがちな令和のご時世にあって、田原俊彦という存在、そしてその生き方はもっと評価されて然るべきだ。

カタリベ: 広瀬いくと

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