DaVinci Resolve Studio製品事例:Huluオリジナルシリーズ「Only Murders in the Building」の場合

Blackmagic Designによると、 Huluオリジナルシリーズ「Only Murders in the Building(原題)」が、PostWorks New Yorkのカラリスト ナット・ジェンクス氏によりDaVinci Resolve Studioでグレーディングされたという。

ジェンクス氏は、DaVinci Resolve 17の新しいHDRプライマリーグレーディング・パレットを活用することで、殺人ミステリーのトーンにマッチする独特なダークコメディのルックを作成した。

同作品の大部分は、アパート内で進行する。これらのシーンはステージ上で撮影され、セットに組み込まれた実用的な照明が使用されている。

ジェンクス氏:一般的にコメディでは、何が起こっているか分からないとジョークを理解できないため、広範囲の照明が使用されます。しかしこの番組は、そのようなありふれた雰囲気にはしたくありませんでした。もちろん見やすさは考慮しますが、いかにもステージっぽく照らされた雰囲気にはならないようにしました。

特定の照明は、SDRでは問題ないのですが、HDRでは明るすぎます。以前であればルミナンスキーを使用していたのですが、DaVinci Resolve Studioのゾーングレーディング・ツールセットは、対象を絞る際にルミナンスキーよりもはるかに役立ちました。

DaVinci Resolve 17の新しいHDRプライマリーグレーディング・パレットは、カスタマイズ可能なゾーンベースの露出/カラーコントロールに対応しており、知覚的に色が一定な画像処理が可能なので、HDRグレーディングのコントロールが強化されている。

HDRでは、照明によって照らされた素材、特にステージ上で撮影する場合に新たな問題が派生します。ビューアで見る画像とカメラの前の被写体の間にあるバリアがHDRでは取り払われることは、多くの場合良いことなのですが、照明がより人工的に見えてしまうこともあるせいで、視聴者が入り込めなくなってしまいます。

ルミナンスキーでは個別のアプローチが必要ですが、ゾーンツールセットはシーン全体に適用されるゾーンを使用して、ハイライトのロールオフを正確にコントロールできます。これで時間を節約することができましたね。

クリス・ティーグ撮影監督の目標は、古典的でありながら新鮮さも感じさせるようなルックを作成することだった。

ティーグ氏:「Only Murders in the Building」は現代的な番組ですが、古典的な殺人ミステリー「裏窓」から、カラーや照明のインスピレーションを得ました。

ジェンクス氏は、1950年代のKodakのカラーフィルムから抜き出したLUTをまとめました。これらのLUTと、他の映画からインスピレーションを得たLUTを使用することで、カラー映画初期のカラートーンを取り入れることができました。全体的に"影響を受けた"ルックにするのではなく、 視聴者に無意識のうちに影響を与えることを期待して、非常に繊細な方法で取り入れました。

ジェンクス氏:ストーリーを明確に伝えるための方法を模索しましたが、これはある意味で古典的なコメディよりも面白かったですね。私たちのカラーワークフローでは、自分で作成したルックだけでなく、経験的に導き出したフィルムエミュレーションも含めて、簡単にルックをブレンドできます。最終的には、新しいVision2と古いKodak 5248のフィルムストックを組み合わせて使用しました。

この番組はおふざけの要素があるので、自由に楽しく、ちょっと馬鹿げたことをするための扉を開いてくれました。クリエイティブチーム全員と仕事ができたことはとても楽しかったです。仕事を楽しむことができれば、最高の仕事に繋がると思います。

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