南天で輝くゆるやかに渦巻いた銀河、ハッブルが撮影した「NGC 1385」

【▲ 棒渦巻銀河「NGC 1385」(Credit: ESA/Hubble & NASA, J. Lee and the PHANGS-HST Team)】

こちらは南天の「ろ座」(炉座)の方向およそ6800万光年先にある棒渦巻銀河「NGC 1385」です。画像には中心部分の明るいバルジの周囲でゆるく巻き付く渦巻腕と、その上に覆いかぶさるように広がっている塵が豊富なダストレーン(ダークレーン)の様子が明瞭に捉えられています。

この画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡の「広視野カメラ3(WFC3)」による観測データをもとに作成されました。広視野カメラ3は2009年5月にスペースシャトル「アトランティス」によって実施された最後のサービスミッション「STS-125」で取り付けられた観測装置です。赤外線・可視光線・紫外線の波長で天体を観測できるために用途が広く、天体に関する多様な情報を得ることができます。

STS-125ではハッブル宇宙望遠鏡の寿命を少なくとも2014年まで延長することが目的とされていましたが、ミッションから12年が経った2021年8月現在ハッブル宇宙望遠鏡は観測を続けています

ちなみに「ろ座」といえば、およそ1万の銀河が写る「ハッブル・ウルトラ・ディープ・フィールド」(Hubble Ultra Deep Field)や、26万以上の銀河をおさめた「ハッブル・レガシー・フィールド」(Hubble Legacy Field)のように、ハッブル宇宙望遠鏡によって無数の銀河が撮影された星座でもあります。

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「ろ座」は比較的新しい星座で、フランスの天文学者ニコラ=ルイ・ド・ラカイユWikipedia)によって18世紀に定められました。現在用いられている88星座のうち14の星座を設定したラカイユは、「ポンプ座」「じょうぎ座」「けんびきょう座」「ぼうえんきょう座」といった、科学に関連した器具や装置にちなんだ星座を作ることを好んだようです。

冒頭の画像はハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚「In the Heart of the Furnace」(炉の中心に)として、ESAから2021年8月16日付で公開されています。

Image Credit: ESA/Hubble & NASA, J. Lee and the PHANGS-HST Team
Source: ESA/Hubble
文/松村武宏

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