662日ぶりの1軍登板 甲斐野央の復活が苦境の鷹リリーフ陣にもたらすもの

ソフトバンク・甲斐野央【写真:藤浦一都】

15日の日本ハム戦で継投ノーヒットノーランを締めくくった甲斐野

15日にPayPayドームで行われた日本ハム戦で史上5度目となる継投でのノーヒットノーランを達成したソフトバンク。味方打線が得点を奪えず、快挙達成にも関わらず引き分けに終わるという史上初の珍事でも注目を集める試合となった。

この試合で無安打リレーの最後を締めくくったのが甲斐野央投手だ。ドラフト1位で入団した2019年に65試合を投げ、侍ジャパンの一員としてプレミア12優勝にも貢献したが、2年目の春のキャンプから右肘の故障に悩まされてきた。1軍のマウンドは2019年10月23日の巨人との日本シリーズ第4戦以来、実に662日ぶりだった。

「すごく緊張しました」と振り返った復帰戦のマウンド。五輪中断中のエキシビションマッチで本拠地PayPayドームのマウンドには立っていたものの、やはり公式戦は勝手が違うもの。さらにはノーヒットリレー中の“おまけ付き”。固い表情でマウンドに上がった。

右肘の故障で苦しみ、662日ぶりの1軍マウンドに

先頭の浅間に対して2球連続でボール。見逃しのストライクを1球挟み、4球目は再びボール。3ボール1ストライクとボールが先行したものの、5球目の158キロでなんとか二ゴロに仕留めた。続く西川の6球目には自己最速タイの159キロをマーク。7球目のフォークで空振り三振に仕留めると、高浜はフォーク、フォーク、ストレートで3球三振。継投によるノーヒットノーランを完成させた。

「技術というよりも、気持ちの準備をしっかりとしてマウンドに上がりました。難しい状況でしたが、結果、0点で抑えることができて良かったです」

試合後は球団を通じて、こうコメントした甲斐野。2年ぶりの復帰登板を上々の形で飾ってみせた。工藤公康監督も「先頭打者は緊張していたみたいだけど、先頭斬って落ち着いて投げられたと思う。これからに繋がるし、いいピッチングだったと思います」と称えていた。

甲斐野が森とモイネロがいない鷹救援陣の救世主に?

甲斐野の復活は後半戦を戦う上で大きな好材料となる。現在、守護神の森を欠き、セットアッパーのモイネロも手首の痛みを訴えて後半戦開始直前に離脱した。代役クローザーの岩嵜や経験豊富な嘉弥真、若い板東や津森といった面々が奮闘して前半戦はチームを支えてきたが、それでも森とモイネロの不在の影響は少なくない。

どこまで救援陣が踏ん張れるか未知数な中で、後半戦に向けて甲斐野の復帰は朗報だ。離脱中に体のコアを使うようにと大きくフォームを変えた。テイクバックが小さくなったが、球速はアップ。自己最速は160キロに迫るようになった。15日の復帰登板でも150キロ台後半を連発。復帰間もないため、過度な負担は禁物だろうが、頼もしい男が戻ってきた。

91試合を消化して39勝37敗15分で首位オリックスと3.5ゲーム差の4位につけるソフトバンク。2年連続のリーグ優勝に向け、ここから上位を追い上げたいところ。2年ぶりに復活を果たした甲斐野央が勝利を呼ぶ使者となるかもしれない。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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