【高校野球】「雨は自分たちのペースなんだ」大阪桐蔭、西谷監督が選手にかけた“魔法の言葉”

水しぶきを上げながら走る大阪桐蔭・松尾汐恩【写真:共同通信社】

大阪桐蔭・西谷監督「粘り強く泥んこになってやろうと」

第103回全国高校野球選手権大会第5日が17日、甲子園球場で行われ、3年ぶりの優勝を目指す大阪桐蔭(大阪)が東海大菅生(西東京)を7-4(8回表途中降雨コールド)で下した。降雨コールドは1998年の専大北上-如水館(7回裏2死、6-6で引き分け再試合)以来、23年ぶりとなった。

小雨が降る中試合が始まると、5回以降雨脚が強まって水たまりができ始めた。7回には更に強い雨がグラウンドの土を叩いた。白線はほとんど消え、内野のグラウンドは銀一色となった。

そんな土砂降りの雨の中でも“西の横綱”は崩れなかった。水たまりのグラウンドでも、選手達は至って冷静だ。大阪桐蔭の西谷浩一監督は「『雨を嫌がったほうが負け』だと、粘り強く泥んこになってやろうと。暗示にかける意味でも『雨は自分たちのペースなんだと』一球一球、気を緩めず、アウトを取っていこう」と選手達に声をかけていた。

雨の中でバッティングやノックをして練習、激しい雨にも動じず

幾多の試合を勝ち抜いてきた名門校の準備はぬかりなかった。「雨でピッチングをしたり、ノックをしたり、ゲームも少々の雨でしたら続けていました。毎年準備していますので、そういう経験は生きたのかなと思います」。屋外で試合をする以上、天候との戦いはつきもの。どんな試合でもモノにできるよう、経験を積ませていた。

3回に左翼へ本塁打を放った藤原夏暉内野手(3年)も「雨が降っている時に、シートノックやシートバッティングをやってきました」と明かした。

百戦錬磨の指揮官も、甲子園での降雨コールドは初めての経験。「最後はバットが飛んだり、ショートゴロのボールが止まったり、野球にならなかったですから。これは難しいかなと。最後までやって勝ちたいと思っていましたが、仕方がない状況だったかなと思います。最後までできませんでしたけども、良いチームに勝たせてもらいましたので、勢いを持って次の試合に入っていきたいなと思います」と気を引き締めた。

悪天候にも動じず、“泥試合”を制した。今春の選抜では智弁学園(奈良)に初戦で敗戦。悔しさを胸に、大阪大会の決勝でも粘りの野球でサヨナラ勝ちし、聖地へ帰ってきた。根尾昂(中日)や藤原恭大(ロッテ)を率いて掴んだ2018年夏以来の「日本一」へ抜かりはない。(上野明洸 / Akihiro Ueno)

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