DeNAから2発の阪神ドラ1佐藤輝 対策を上回る進化に三浦監督「いろいろ考えながら…」

阪神・佐藤輝明【写真:荒川祐史】

佐藤輝のDeNA戦成績は打率.328、5本塁打、14打点

■阪神 6ー2 DeNA(17日・東京ドーム)

阪神のドラフト1位ルーキー・佐藤輝明外野手は17日、東京ドームで行われたDeNA戦で2本塁打を含む5打数3安打3打点と打ちまくった。3回の21号ソロで新人左打者のプロ野球最多本塁打を更新し、6回の22号ソロで田淵幸一が1969年にマークした球団新人最多本塁打に並んだ。セ・リーグで佐藤輝に最も打たれているのがDeNA。対戦打率.328(61打数20安打)、5本塁打14打点とルーキーにやられている。「対策は考えていたが、打たれた」(三浦大輔監督)のはなぜだったのだろうか。

セ・リーグで、佐藤輝がDeNAに次いで得意としているのは広島。.327(52打数17安打)、4本塁打14打点でDeNAとほぼ変わらない。逆に、最も苦手なのはヤクルトで、.164(55打数9安打)、3本塁打9打点に抑えられている。比較的対戦が少ない中日にも、.200(35打数7安打)、2本塁打2打点だ。

例えばヤクルトは、6月29日からの対阪神3連戦(甲子園)でも佐藤輝を10打数1安打6三振に抑えた。同30日には先発の高梨が内角の速球でファウルを打たせ、外角低めのフォーク、もしくは真ん中低めでワンバウンドとなるフォークを振らせるパターンで2奪三振。リリーフした清水も、インハイのストレートを見せた後、フォークで3度空を切らせ三振に仕留めた。

翌7月1日には、先発の奥川が膝元へのカットボールを見せた後、インハイの速球でファウル、外角低めのフォークで見逃がしストライクを稼ぎ、最後は真ん中高めのボール球のストレートを振らせて三振を奪った。佐藤輝が苦手とする内角へのストレート系と、外角低めへの落ちる球、さらには高めのボール球を巧みに散らした。ストレートが真ん中から外側のストライクゾーンに行くことはなかった。

内角高めを右翼席へ、内角低めを左中間席に運ばれた

この日のDeNAはどうだったか。先発の左腕・浜口遥大投手は1回1死満塁でカウント3-1から外角高めに浮いたチェンジアップを捉えられ、右翼フェンス直撃の先制適時打を許した。ボール球を使えない状況もあり、これは失投の部類だろう。

しかし3回には、内角速球と外角低めスライダーでカウント1-2と追い込んでいた。ところが6球目の内角高め141キロを、巧みに肘をたたんで右翼席へ運ばれてしまった。さらに6回、カウント1-1から難しい内角低めの137キロを、逆方向の左中間席へ打ち込まれてしまう。内角球に見事に対応した2発は、DeNAにとって誤算だったはずだ。

7回には最速163キロを誇る左腕エドウィン・エスコバー投手を投入し、初球の内角への148キロのツーシームで詰まらせ二ゴロ。9回にも左腕の櫻井周斗投手が外角低めへのカットボールで追い込み、最後はワンバウンドとなるナックルカーブを振らせて三振に仕留めた。逆に言えば、この日の佐藤輝はこれくらい特殊な球でなければ抑えられない状態だったかもしれない。

もちろん好不調の巡り合わせもある。7月は月間打率.227(44打数10安打)と低調だった佐藤輝だが、東京五輪開催に伴う中断期間中、エキシビションマッチで5本塁打を量産し、上り調子で後半戦を迎えていた。

いずれにせよ、対策を上回る進化を見せつけられた衝撃は小さくない。三浦監督は「また明日、いろいろ考えながら攻めていきたい」と語った。怪物ルーキーに対し、どんな形でプロの意地を見せるか。

【動画】低めの球を逆方向へ… 阪神・佐藤輝明の球団新人最多タイとなる豪快22号ソロ

【動画】低めの球を逆方向へ… 阪神・佐藤輝明の球団新人最多タイとなる豪快22号ソロ signature

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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