エネルギーの地産地消へ 再エネ水素実証プラント 運転開始 長崎・イワテック

岩元社長(左から2人目)と水素グループのメンバー=長崎市、イワテック水素製造実証プラント

 東京五輪の聖火の燃料に使用されるなど、次世代エネルギーとして注目される水素。再生可能エネルギー事業を手掛けるイワテック(長崎市)は、太陽光発電で得た電力を使って水素を製造、貯蔵する「再エネ水素実証プラント」を同市内に建設し、運転を始めた。見据えるのはエネルギーの地産地消。脱炭素社会と「持続可能な開発目標(SDGs)」の実現へ向け、製造から供給までのサプライチェーン構築を目指す。
 経済産業省資源エネルギー庁によると、中小企業が水素製造プラントを造り、実験に取り組むのは全国的にも珍しいという。
 水素は燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出しないため、脱炭素社会実現の切り札として、本格活用に向けた動きが国内で加速している。中でも、再生可能エネルギーを使ってつくられた水素は、製造過程でもCO2を出さない利点があり「グリーン水素」と呼ばれる。国内では福島県浪江町に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などが整備した世界最大級のグリーン水素の製造拠点があるが、製造コストや安定調達など課題は多い。
 イワテックは今回、同市琴海形上町の社有地に、延べ床面積約108平方メートルの建屋と太陽光パネル160枚を備えたグリーン水素製造実証プラントを建設。太陽光による電力を建屋内の蓄電池にため、その電力を使って水を電気分解、水素を製造する。できた水素を貯蔵し、運搬用で一般的な水素ボンベ(47リットル)に圧縮して詰めるまでを行う。太陽光発電の出力は49.6キロワット。天気がいい日でボンベ3本分の水素を製造できる。
 プロジェクトの中心は、同社水素グループの日本、インドのエンジニア4人。6年前から準備を進め、海外製の発生装置を同社仕様にカスタマイズして作り上げた。鶴丸将太朗グループ長(35)によると、プラントでは、天候に左右される太陽光発電を使い、いかに効率よく水素をつくり出せるかや、貯蔵、輸送に最適な方法などを探る。並行して県内の水素需要の掘り起こしも進めていくという。
 7月27日にあった竣工(しゅんこう)式で、岩元孝一郎社長は「水素社会のリーディングカンパニーとなり、長崎から日本、世界へ広げていきたい」と意欲を語った。

再エネ水素サプライチェーン構想

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