日本列島ゆるゆる古墳ハント(29)赤色装飾の呪術的なパワーが魅力!茨城県ひたちなか市「虎塚古墳」

「旅チャンネル」の企画で世界一周を2回経験した、古墳を愛するイラストレーター・マンガ家の水谷さるころが、これまで訪れた日本各地の古墳の魅力を紹介します。今回は、茨城県ひたちなか市の「虎塚古墳」です。

虎塚古墳 墳丘

※コロナ禍なので実際はマスクをしていますが、マンガでは人物のマスクは省略しています

茨城県が誇る古墳の中でもひときわ虎塚古墳が魅力的なのは、やはり「装飾古墳」であるからだと思います。

「装飾古墳」は石室内部の壁や石棺に浮き彫りや、線刻、彩色などが施された古墳のことです。日本全国で約600基ありますが、その半数以上は九州にあります。特に熊本県や福岡県に集中し、福岡県の「王塚古墳」や熊本県の「チブサン古墳」などが有名です。

しかし、関東地方にも100基ほどの装飾古墳があり、関東地方を代表する装飾古墳が「虎塚古墳」なのです。

虎塚古墳 案内石碑と墳丘

古墳自体は全長56.5m、高さ7.5mの決して大きくはない前方後円墳です。古墳時代としては後期の7世紀前半頃の築造と推測されています。1973年に発掘調査が行われました。石室は未盗掘で、遺骸と副葬品と共に保存状態のよい装飾壁画が発見されました。1974年に国史跡に指定されています。

虎塚古墳 石室入口

装飾は赤色の「ベンガラ」で描かれています。赤色のみですが、石室正面の円形の2つの図案が非常に力強く、呪術的なパワーを感じさせます。石室の公開は年2回、春と秋に行われていますが、コロナ禍の2020年春・秋、2021年春と公開は中止されました。古墳石室内は換気ができないため、装飾古墳の公開は残念ながら中止されているところがほとんどです。

ひたちなか市埋蔵文化財センター内 虎塚石室レプリカ

虎塚古墳は、すぐ近くにある「ひたちなか市埋蔵文化財調査センター」にて、レプリカが展示されています。レプリカは写真撮影もOKなので、存分に記念撮影を楽しむことができます。もちろん虎塚古墳の出土品も展示されていますので、実際の石室内部が見られなくても十分、虎塚古墳を満喫することができます。

虎塚古墳のひたちなか市観光案内板

それと・・・ひたちなか市の観光7案内看板が非常にかわいらしかったです。ここだけでなく、ほかの古墳の案内板など、ひたちなか市の観光スポットを紹介する看板は、ピクトグラムと文字が合体した非常にかわいいデザインでした。こういうところが凝っていると、現地を訪れる楽しみになります。

川子塚前方後円墳のひたちなか市観光案内板

こちらのデザインは「ひたちなか海浜鉄道」の駅名にも使われているそうで、駅名のデザインをパッケージに使った「トレンシェ」というお菓子が販売されているそうです。ぜひ・・・名所や遺跡のシリーズもグッズにして売っていただきたいです!この「虎塚古墳」のキーホルダーがあったら絶対買います!

虎塚古墳群第4号墳

虎塚古墳の周りには、虎塚古墳以外にも遺跡があります。虎塚古墳群第4号墳は、近くの畑に石室が残っています。墳丘が全てなくなり、石室だけになってしまっているのは寂しいのですが、巨大な石室がかつての古墳を偲ばせます。

そして・・・近くにあるといえば、県指定史跡である「十五郎穴」です。こちらは古墳時代終末期から奈良時代にかけて作られたと見られる横穴墓群で、古墳時代から遠く離れていない史跡です。「十五郎穴」といいつつ穴が15個とかではなく、確認されているだけで272基の横穴墓があるそうです。

古墳、遺跡が好きな方には外せないスポットだと思うのですが・・・。スミマセン、私は横穴墓が苦手なのです。1つだけならまだいけるんですが、横穴墓群が怖いんです・・・!十五郎穴は行ってないので写真がありませんが、ぜひ検索して画像を見てください。なかなかの迫力です。「ひたちなか市埋蔵文化財調査センター」には十五郎穴の資料もありましたが、パンフレットに載っている写真に人骨が写っていたりして・・・「やっぱり怖い」と思い、行かずに帰ることにしました。古墳の石室はそこまで怖くないのですが、横穴墓群は「墓としてのリアリティ」がありすぎて苦手・・・というゆるゆる古墳ハンターなのでした。

虎塚古墳 墳丘上

虎塚古墳

住所:茨城県ひたちなか市

[All Photos by Mizutani salucoro]

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