ヒプマイ楽曲「Glory or Dust」に漂う"ガチ感"の正体は。2ndD.R.Bに相応しい壮大さ

アニメソング(アニソン)を語る連載、第六回目は『ヒプノシスマイク』が登場です! 今回取り上げるのはDivision All Starsの「Glory or Dust」「Hang out!」。2曲の凄さや注目したいポイントは?

ガチオタである一方、約10年のミュージシャン歴も持つ音楽ライターの私・曽我美なつめが紐解くアニソン連載。

音楽×二次元両方の側面からアニソンを解剖する本連載、第6回の今回は、今まさに開催中のバトルからも目が離せない『ヒプノシスマイク』(以下『ヒプマイ』)関連の楽曲を数回に渡りご紹介。

まず本回では、『ヒプマイ』のメインキャラクター16人の魅力が濃縮されたDivision All Stars歌唱楽曲を解説致します!

ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- 1st FULL ALBUM『Enter the Hypnosis Microphone』

ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- 1st FULL ALBUM『Enter the Hypnosis Microphone』

戦闘力高めのガチ感「Glory or Dust」

キャラによるラップ楽曲先行型コンテンツとして始まったプロジェクト・ヒプノシスマイク。

そのコンセプトに恥じないハイクオリティな楽曲で、二次元界隈だけでなく音楽界隈からも注目を集めるプロジェクトです。

様々な人気アーティストからの曲提供の話題も絶えず、最新曲ではついに邦楽界の重鎮・Dragon Ashからの曲提供も決定しましたね。

現在、ヒップホップ・ラップとは切っても切り離せないバトルシーズンに突入しているヒプマイ。

2回目のバトルとなる今回のテーマソング楽曲。それがDivision All Starsによる「Glory or Dust」です。結果の如何によっては、今後の物語の展開すらも左右するこのバトル。各ディビジョンのファンにとっては、文字通り一瞬たりとも見逃せないものでしょう。

前回の雪辱を果たすチーム、初の戦いに挑むチーム、そして王座を死守するチーム。それぞれのディビジョンの威信をかけた戦いに相応しい、戦闘力高めの楽曲というところでしょうか。

本曲の最も大きな特徴は、なんといってもサウンド面におけるその“ガチ感”。

これまでのDivision All Starsリリース曲とは明らかに一線を画したその雰囲気から、第2回バトルへの各ディビジョンの本気をそこに垣間見たファンも多いはず。

ヒプノシスマイク Division All Stars「ヒプノシスマイク -Glory or Dust-」

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楽曲の迫力や“ガチ感”を大きく演出している最たるポイントは、そのサウンド。

これまでの「Division Battle Anthem」や「Alternative Rap Battle」「Hoodstar」などでは、いわゆる打ち込みらしさのある電子音や、バンドサウンドが主体で用いられていました。

しかし今回の「Glory or Dust」に関しては、これまでのヒプマイ曲と比較してもかなり異色なクラシカル・マーチングテイストのサウンドで構成されています。

元々のヒップホップ・ラップという音楽ジャンルを鑑みても、このサウンドとの組み合わせは非常に珍しいでしょう。特に印象的なのは主に各メンバーのラップパートの力強さに拍車をかける、マーチングを彷彿とさせるスネアドラムのサウンドです。

今回の楽曲はリズム音がドラムやシンセではなく、ほぼ終始このスネアドラムのみの構成なのも大きなポイント。

この音をよく聞いてみると、実は全く同じ動きの音を複数重ねたサウンド作りがなされているんです。これにより楽曲全体を通して、まるでRPGのラスボス戦や負けられない戦いに挑む時のような。そんな勇猛さや壮大な雰囲気を感じた方も多いのではないでしょうか。

いわゆる「重ね録り」と呼ばれるこの手法。これを用いることで、単体の音だけでもここまでの厚みや迫力を生み出すことができるんですね。

(直近の話題曲としては、映画『竜とそばかすの姫』メインテーマ、millennium parade 「U」の冒頭のスネアドラムもこれに近い作りです。よく耳を澄ましてみると、音が2つ重なっているように聞こえませんか?)

心地よいリリックの「Hang out!」白膠木簓パートに注目

ヒプノシスマイク Division All Stars『Hang out!』Music Video

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一方で、Division All Starsによって7月15日のタイミングで公開されたもうひとつの楽曲。

それが先ほどの「Glory of dust」とは対を為す雰囲気の「Hang out!」です。

『ヒプマイ』というコンテンツのいわゆるメインストーリー(CDドラマトラック)とは、別軸の世界線で物語を展開するアプリゲーム「ヒプノシスマイク -Alternative Rap Battle-」。

今回ストーリーにオオサカ、ナゴヤを加え、さらにアプリオリジナルキャラも参戦しての新章突入。それをきっかけとして新主題歌となったのが本楽曲ですね。

先述の「Glory of dust」の魅力が“ガチ感”ならば、対するこちらの曲の魅力はどこまでも真反対の“ユル感”。

タイトルの「Hang Out!」=「遊ぼうぜ!」という言葉通り、肩の力を抜いてラップを楽しむキャラの魅力が満載の楽曲ともなっています。本筋のストーリーは絶賛バトルシーズンであるものの、『ヒプマイ』の良さのひとつは元々物語始まりのコンテンツではないため、1つの世界線のみに縛られないという点。

だからこそ本気で戦う彼らを楽しみつつ、争いを一旦横に置いた和気藹々としたムードの彼らも同時に楽しめる。それが『ヒプマイ』の大きな特徴でもあり、ここまで多くのファンが様々な形でコンテンツを応援できる良さでもあるのでしょう。本曲のポイントは、ずばり韻の踏みやリズム感が軽快で心地よいリリック!

先程の「Glory of dust」と対比することで、その軽やかさやメロディ感がより明確に感じられます。

各ディビジョンごとの色や、メンバーの関係性もよく見える歌詞。様々な見どころはありますが、敢えて一番を推すのであればオオサカディビジョン・白膠木簓のパートでしょうか。

「暑苦しいのはカンベン、本気でオモロいことをやる」というキャラの人柄も、曲のコンセプトである気楽感にぴったりなのは言わずもがな。

中でも彼の歌唱パートの一番最後、「よぎる脳裏」の韻の踏み方はお見事の一言。

普通であれば音を詰めてそのまま歌い切る箇所に変則的な休符拍を入れることで「フローリング」との韻を踏み、同時にリスナーの耳を惹きつけるリズム感を成立させています。

さらに次のメンバーへ繋ぐ重要なタイミングのラストフレーズに、敢えて力を抜いたリリックを置いたのもかなりテクニカルなポイント。

普通であれば力が入ってしまうポイントを飄々とかわす彼の姿が、まさしく目に浮かぶようなフレーズのようにも感じられますね。

楽しみ方はひとつじゃない!あなたの好みはどっち?

多彩なコンテンツ展開で、人それぞれの楽しみ方で応援できる『ヒプノシスマイク』。

だからこそ実現した正反対の“ガチ感”と“ユル感”が楽しめる、Division All Starsによる2曲。さてあなたのお好みは、どちらの楽曲ですか?

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