#あちこちのすずさん 家を襲った機銃掃射…弾丸は間一髪 押し入れの中で命拾いした母

 戦時下の日常を生きる女性を描いたアニメ映画「この世界の片隅に」(2016年)の主人公、すずさんのような人たちを探し、つなげていく「#あちこちのすずさん」キャンペーン。読者から寄せられた戦争体験のエピソードを紹介しています。

(男性・73歳)

 神奈川県相模湖町(現・相模原市緑区)にあった私の生家の裏庭には、防空壕があった。

 入り口は2メートルほど。深さ3メートルほどの縦穴を降りて、横に数メートル進むと、肩を並べて数人が収まるほどの地下空間があった。空襲警報が出ると、隣近所の人も一緒にここへ逃げ込んだという。

 夏は涼しいので、戦後もしばらくは貯蔵庫として使っており、私は小学生の頃に2~3度入った記憶がある。それから間もなくして埋められたようだ。

 空襲については、母や祖母から繰り返し聞かされた話がある。

 終戦近くに米軍戦闘機による機銃掃射があった時、防空壕に逃げ込む余裕もなく、家族は押し入れの布団にくるまってじっとしていた。

 飛行機が去った後、母の布団に実弾が撃ち込まれていた。屋根を貫通し、トイレの戸の右上隅に穴をあけ、そこでようやく止まったのだ。

 トイレに残った10センチほどの穴を見ては「本当に間一髪のところで命拾いした」とよく言っていた。

 時がたち、生家は建て替えられ、母も亡くなった。空襲の話は、私の記憶の中だけに残っている。

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