横須賀線の「危険な踏切」 20日に廃止 死亡事故でJR「命守るため」

山の根踏切の入り口には廃止を伝える看板が立て掛けられている=逗子市逗子

 神奈川県逗子市逗子2丁目のJR横須賀線「山の根踏切」が、20日午前1時に廃止される。警報機や遮断機がない上に35.5メートルと極端に長く、2019年3月には横浜市内の男性(92)=当時=が死亡する事故が起きていた。地元住民からは存続を求める声が上がっているが、JR東日本も検討を重ねた末に廃止の結論に至った。同社は「今も危険な状態は続いている。全ての通行者の命を守るためにやむを得ない判断」と理解を求めている。

◆「地域の生活道路」
 JR逗子駅から約300メートル離れた住宅街にある山の根踏切は歩行者専用で幅約2メートル、全長35.5メートル。警報機や遮断機がない「第四種踏切※」で、横須賀線、貨物線、留置線の線路9本をまたいでいる。

 死亡事故は、2019年3月21日夕に起きた。運輸安全委員会の報告によると、墓参りに出掛けていた男性は入り口付近で左右の安全を確認し、事故の約30秒前に渡り始めていたが、電車が通過するまでに渡り切れなかったとみられる。

 JRによると、1987年以降、同踏切では死亡事故が3件発生。廃止について同社は「二度と死傷者を出さず安全を守るため、一日も早い廃止にご理解いただきたい」と説明する。

 JRは10年以上前から市に廃止を相談してきたというが、少なくとも数十年前から地域の生活道路として多くの住民に利用されており、存続を求める声は根強かった。

◆廃止・存続 課題は
 事故を受けてJRと市、住民らは今年5月までに意見交換を4回実施し、現地確認も行った。住民らの提案も踏まえ、JRは(1)警報機・遮断機の設置(2)待機場所を設置(3)踏切移設-などを検討したという。

 しかし、いずれもスペースや安全性の確保が難しいことや、踏切の新設は社や国の方針に逆行することなどから断念した。現地を調査した運輸安全委員会も、用地不足から踏切の安全設備設置は「著しく困難」との認識を示す。

 住民は今後、約300メートル離れた逗子駅そばの金沢新道踏切(警報機、遮断機付き)と歩道橋を利用することになる。同踏切にも歩道幅が狭く遮断時間が長いなどの課題があるため、JRは県や市と道路拡幅などを検討しているという。

※第四種踏切 警報機と遮断機のない踏切で、2019年度末で全国に2603カ所あり、踏切全体の約1割を占める。警報機や遮断機付きの第一種踏切に比べ、事故発生率は約1.4倍。県によると、県内には同年時点で29カ所ある。山の根踏切のような30メートル超は珍しい。

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