ハッスルプレーに指揮官も「手本になる」 DeNAに戻った“リーダー”オースティンの存在感

DeNAのタイラー・オースティン【写真:荒川祐史】

バックスクリーンへ勝ち越し弾放つもチームは逆転負け

■阪神 5ー2 DeNA(18日・東京ドーム)

東京五輪に米国代表の中心選手として出場し、銀メダル獲得の原動力となったタイラー・オースティン外野手が、DeNAに戻ってきた。18日に東京ドームで行われた阪神戦に出場し、1-1の同点で迎えた7回、中堅バックスクリーンへ勝ち越し20号ソロ。チームは逆転負けを喫したものの、相も変らぬ破格のパワーと存在感を見せつけた。侍ジャパンにとっては最大の脅威だったが、DeNAにとってこれほど頼りになる味方はいない。

ここぞの場面で無類の強さを発揮する。DeNAはこの日、阪神先発のドラフト2位ルーキー・伊藤将に6回までわずか3安打1得点に抑えられ、「4番・右翼」で出場したオースティンも2打席2三振を喫していた。ところが、7回1死走者なしで迎えた第3打席。フルカウントから真ん中に来た135キロのツーシームを逃さず、バックスクリーンへ飛び込む勝ち越しソロ。「とらえた感触は良かったのですが、打球が高く上がったのでスタンドまで届くかわからず走っていました」と笑った。

チームは続く8回、救援したエドウィン・エスコバー投手が一気に3点を失い逆転され、オースティンの殊勲弾をフイにしたが、気落ちした態度は一切見せない。それどころか9回の守備では、無死一塁で近本が右前打を放った際、一塁から三塁を狙った走者・原口をワンバウンドのストライク送球で刺した。

3回の守備でも、近本の右翼後方への飛球を好捕し、そのままフェンスに激突。来日1年目の昨季、フェンスに激突し「脳振とう」と「むちうち」発症で登録抹消に追い込まれたことがあったが、闘志あふれるプレーは全く変わらない。助っ人のこんな背中を見て、周りの選手が奮い立たなかったらおかしいだろう。

守ってもストライク送球で補殺&フェンス激突の好捕

日本での活躍を買われて東京五輪の米国代表に選出され、全6試合でヒットを放ち計24打数10安打2本塁打7打点、打率.417をマーク。メジャーでも通算33本塁打の実績を持つ29歳は、若手のマイナーリーガーたちを引っ張り銀メダルへ導いた。決勝戦で敗れた直後には、侍ジャパンの選手たちと健闘をたたえ合う姿が好感を呼んだ。

日頃からオースティンを「手本となる選手」と評する三浦大輔監督は、「五輪でアメリカ代表の打線を引っ張っていたが、それだけの選手であることは最初からわかっていた」とうなずく。チームに合流したオースティンには「DeNAでまた力を発揮してくれ」と声をかけたと言う。

この日の試合前には、6月度の「大樹生命月間MVP賞」授賞セレモニーが行われ、賞金30万円などを贈られたオースティン。今季はコロナ禍で来日が開幕に間に合わず、1軍合流はチームの今季16試合目、初スタメンは18試合目にずれ込んだ。それでいて、いまや規定打席数をクリアしリーグ3位の打率.317。20本塁打と50打点はいずれもチーム最多である(18日現在)。

DeNAはペナントレース後半戦突入後3戦3敗で、セ・リーグ最下位から抜け出せないが、オースティンがいる限り上位進出を諦めることはありえない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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