横浜市長選 前代未聞の再選挙あるか? 結果次第で菅首相の進退問題に発展の可能性も

ある意味、ハシゴを外された林氏だが意地がある

神奈川・横浜市長選(22日投開票)は8人が立候補する大乱戦となっている。有権者314万人の選挙の争点はカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致で、終盤戦に差し掛かり、各陣営はヒートアップ。菅義偉首相(72)のお膝元とあって、結果次第では進退問題に発展するとの見方もあれば、前代未聞の再選挙で続編突入もありそうな気配も。“ハマの仁義なき戦い”の行方は――。

過去最多となる8人が乱立した要因はIR誘致だ。4年前に林文子市長(75)が再選された後に誘致が本格化。菅首相の肝いり案件とあって、大阪と並ぶ有力候補地になっていたが、反対派は住民投票の署名集めに奔走するなど徹底抗戦の構えだ。“ハマのドン”こと藤木幸夫・横浜港ハーバーリゾート協会会長(91)も「山下ふ頭にカジノは造らせない」と表明し、フタを開ければ林氏と元衆院議員の福田峰之氏(57)以外の6人は、IR反対候補が出揃った。

林氏のポスターやチラシには、IRの2文字はない。争点隠しかと思いきや街頭演説では、カジノの経済効果を声高に主張した。林氏は「(誘致を)議会で議決してきたのにある日、変わってしまった。自民、公明さんはIRをやらないという人を応援すると。経営者出身として、IRは有効な策と確信している。信念を持って横浜市の将来のためにやってきた」と、BMW東京やダイエー、日産の経営トップなどを務め、3期12年も市政を担ってきただけに負けん気も強い。

「大臣を辞めて市長に出るとは、本当に驚いた」と、応援演説に駆け付けた自民党の石破茂元幹事長(64)が声を上げたのは小此木八郎氏(56)だ。菅首相や藤木氏と近いが、これまで党内では主流派とは距離を置き、不遇だった時期が長かっただけに、閣僚を辞しての市長選出馬は仰天というわけだ。

小此木氏は「IRが争点になっているが、やる、やらないではなく、やめた後の街づくりをどうするのか。脱炭素社会の実現に取り組まないといけない」と訴える。もはやIRは争点ではなく、その先の訴えに余念がない。同じ神奈川選出で弟分に当たる小泉進次郎環境相(40)の応援カードをどこで切るかも注目される。

「カジノ粉砕! 横浜に新たな文明開化を! 小此木候補が敗れれば、即日菅政権が倒れます!」と街頭でビラを配る男性の熱が入るのは、立憲民主党推薦、共産党や社民党が支援する横浜市立大元教授の山中竹春氏(48)の陣営だ。

コロナ禍で科学的見地からメディアに露出していたことから「候補者で唯一のコロナ専門家」が売りで、IR誘致にも即刻撤回を表明している。ただ告示前に週刊誌でパワハラ疑惑が報じられ、陣営や立憲民主党が否定に追われるなど、騒がしくなっている。

元長野県知事の田中康夫氏(65)、前神奈川県知事の松沢成文氏(63)は知名度が高いとあって、街頭演説で足を止める聴衆が多い。

選挙中盤の各社による情勢調査では、山中氏がややリードし、小此木氏が追いかける展開だが、当選に必要な法定得票数に届く候補がいなければ再選挙となる可能性もある。公選法には、トップの得票数を獲得したとしても有効投票の4分の1を超えなければ当選とならない規定があるのだ。

一発で決まるのか、第2Rに突入するのか。当選を狙う各陣営の思惑がひしめく中、最後の最後までもつれることになりそうだ。

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