「マクラーレンは自分の場所だと感じた」元F1王者バトン、CEOの怒号が飛んだブラウンGP離脱を振り返る

 元F1ドライバーのジェンソン・バトンは、2009年にF1世界チャンピオンとなったブラウンGPを離れ、2010年にマクラーレンに移籍するという衝撃的な決断をしたことで、チームのCEOだったニック・フライの怒りを買ったと述べている。

 2009年、バトンはブラウンGPで最高の年を過ごした。6戦で優勝し、圧倒的な性能を持つメルセデスエンジン搭載のマシン『BGP001』で世界タイトルを獲得したのだ。

 バトンは2010年にブラウンGPと再契約すると見られていた。特にメルセデスと、アラブ首長国連邦が所有している企業アーバルインベストメントが、チームの株式を75%取得し、チームをメルセデスGPとしてリブランディングした後だったからだ。

2009年F1第16戦ブラジルGP 初タイトルを獲得したジェンソン・バトン(ブラウンGP)

 しかしバトンは驚いたことに、ルイス・ハミルトンのいるマクラーレンからの複数年契約のオファーを受け入れた。この決断は当時多くの人が“クレイジー”だと受け止め、フライもよく思わなかった。

「僕たちは2009年に世界選手権で優勝して、マクラーレンに来た」とバトンは『The High Performance Podcast』に語った。

「みんな、マクラーレンに移籍してルイス・ハミルトンのチームメイトになるなんて最もクレイジーな移籍だと言っていた。ロス・ブラウンですらそう言った」

「僕はチームに、2009年の終わりに去ることを伝えた。ニック・フライに話したけれど、当時ロス・ブラウンとともに経営陣のひとりだった彼は、基本的には僕にただ怒鳴っただけだった」

「彼のオフィスに行って僕がチームを去ることを伝えると、彼が僕に怒鳴ってきたので、僕は仕方なく笑い始めたのを覚えているよ。本当に気まずい状況だったからね」

「彼の気持ちは分からなくもない。彼がどれだけ攻撃的だったかもね。彼は『何で笑っているんだ』という様子で僕を見ていた。予想していなかった状況だったよ」

ニック・フライ(ブラウンGP CEO)

 バトンは、ブラウンが彼の決断に対してフライより落ち着いた様子だったことを覚えている。だがブラウンは、バトンの選択や、彼の新しいマクラーレンのチームメイトに立ち向かうことについて警告したという。

「ロスに話したとき、彼はとてもフレンドリーに、ルイスのチームメイトになるのは大きな間違いだと思うと言った」

「僕は『これは素晴らしい』ともっとポジティブな感覚だった。ついにここまで来たかという感じだったよ。来年の契約はなかったし、そこは自分の場所ではないと感じた。だけどマクラーレンは自分の場所だと感じたんだ」

 最終的にバトンはマクラーレンに7シーズン所属し、2010年から2012年の間に8勝を記録した。

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