大阪感染者2000人超の日に大阪市が「万博開催まであと4年!」とダウンタウンのメッセージ投稿! 松井・吉村のコロナ軽視浮き彫り

大阪市広報Twitterより

ついに首都圏のみならず、大阪の感染爆発も決定的となった。昨日18日、大阪府の新規感染者数がはじめて2000人を超え、過去最多の2296人に。すぐに使える「実運用病床」の使用率も、軽症中等症病床では71.5%、重症病床でも48.6%と医療提供体制の逼迫があらわになっている。

周知のとおり、第4波で大阪は5月だけで死亡者が859人、医療にかかることもなく自宅で亡くなった人は19人にものぼった。しかし、すでに大阪府の入院患者数は第4波のピークを超え、今後、重症者が増加することは明らか。またも救えたはずの命が救えなくなるのではないか。不安は広がる一方だ。

ところが、そんな非常事態時に、大阪市が絶句するような“広報”をおこなった。

府内の新規感染者数が初の2000人超えと大きく報じられていた昨日の18時半すぎ、大阪市広報担当公式アカウントである「大阪市広報」が、Twitterでこんな投稿をおこなったのだ。

〈【大阪・関西万博開催まであと4年!】 大阪・関西万博アンバサダーのダウンタウンさん から万博に向けたメッセージをいただきました!ぜひご覧ください!〉

そして、貼られたリンク先には、2025年日本国際博覧会アンバサダーを務めるダウンタウンや、指揮者の佐渡裕氏のメッセージ動画が。ダウンタウンの動画では、松本人志が「僕は浜田さんとは違ってパビリオン並んで見ようかなと」と言うと、浜田雅功が「ちゃんと並びますよ」などと掛け合いをし、「我々もがんばります、応援します」と締めくくっていた。

東京五輪の開会式では小山田圭吾の過去のいじめや小林賢太郎、竹中直人の差別ギャグなどが問題になり、辞任・解任が相次いだが、ダウンタウンも過去には女性差別やいじめを助長するようなネタをさんざんやっている。そんな芸人が世界的なイベントである大阪万博アンバサダーをまだ続けていたのかとも驚いたが、問題はそれ以前だ。

第4波のピーク時の2倍を超える新規感染者数が発表された直後に、市の広報アカウントが万博の宣伝を打ち出すっていうのは、一体どういう神経をしているのか、という話だろう。

●大阪市は今年4月23日を最後に「新型コロナウイルス感染症対策本部会議」を一度も開催せず

そもそも、大阪市は万博の宣伝をやっているような状況ではない。昨日の大阪府の新規感染者2296人のうち大阪市の感染者数は889人にものぼっており、大阪市は確保病床の使用率でも62.1%(17日時点)という逼迫した状況だ。さらに、昨日おこなわれた大阪府の新型コロナ対策本部会議では、りんくう総合医療センターの感染症センター長である倭正也医師がこんな意見を寄せていた。

「大阪府全体で陽性者数が増加しているとは言え、特に大阪市においては保健所機能や医療体制が第4波の時から改善されていないのではないかと思うぐらい重症者の増加、そこからの搬送が目立つようになっている」

大阪市は保健所機能も医療提供体制も第4波から改善されていないのではないか。そんな厳しい指摘を受けたその日に、「万博応援します!」なんてメッセージを発信している場合か。

だが、第4波の反省などまるでない態度は、広報にかぎった問題ではない。というのも、松井一郎・大阪市長は昨日、自身の言葉で新型コロナについて何か呼びかけるような投稿をひとつもせず、その一方で大阪市広報によるダウンタウンのメッセージ宣伝投稿はわざわざリツイートしたからだ。

いや、松井市長の怠慢はそれだけではない。なんと、大阪市が設置した「大阪市新型コロナウイルス感染症対策本部会議」は、今年4月23日を最後に一度も開催されていないのだ。

もっと言えば、大阪市が公表している「市長日程」によると、松井市長の18日の公務日程は「なし」。さらに本日19日も「公務日程なし」となっている。それどころか、じつは松井市長は14日(土)からずっと「公務日程なし」が連続しており、実質6連休。先週6日(金)〜9日(月)も「公務日程なし」の4連休だったというのに、である。

デルタ株というかつてない危険に瀕し、現場の医師から「保健所も医療体制も第4波から改善されていない」と指摘されているのに、コロナ対策の会議も開かず、公務日程もなく、やることといえば万博を応援するダウンタウンの動画メッセージの拡散……。もはや正気の沙汰ではないだろう。

●コロナ対策、住民の安全確保より、維新の党勢拡大だけを優先してきた吉村知事・松井市長

無論、こうした松井市長の態度はいまにはじまった話ではない。実際、最近の松井市長といえば、日本維新の会が大阪市大規模接種センターに飲み物を寄付していたことを「AERA.dot」が報じ、公職選挙法違反ではないのかと指摘された件について、「去年から医療用マスクやガウンなどを日本維新の会国会議員団の『身を切る改革』で生み出した財源で寄付してもらっている。まったく問題ない」などと強弁。さらには「どうせまた共産党あたりがどうのこうの言うんでしょうけど、立憲とかも言うかな」「(どうのこうの言うなら)自分たちもやればいいじゃない」などと居直り、公選法に抵触しかねない問題を正当化する始末。

さらに、東京五輪開催中の7月30日には、「感染者がいなければオリンピックもやっている。一生の思い出に残る行事は実施したい」と言い、8月に予定されている市立中学4校の修学旅行を実施することを表明。「コロナ感染が始まってから子どもたちの重症者で命を失くしたという人は1人もいない」などと述べ、すでに子どもの感染が拡大しつつあったというのに、菅義偉首相よろしくデルタ株を過小評価したのだ。

また、第5波がはじまったと指摘されていた最中の7月はじめには、東京都議会議員選挙の応援のため、吉村洋文・大阪府知事とともに大阪を離れて来京。府民・市民に対して「不要不急の外出自粛」「不要不急の都道府県間移動、特に緊急事態措置区域との往来は、極力控える」と呼びかけておきながら、である。

このように、感染防止対策の強化をなおざりにする一方、松井市長がやってきたことといえば、吉村知事と一緒になって党勢拡大に精力を傾けるか、維新のコロナ対策などを批判的に報じてきた毎日放送(MBS)や毎日新聞を攻撃することぐらい。そして、いま「保健所機能も医療提供体制も第4波から改善されていない」という指摘が出ているように、第4波の惨劇をまたも繰り返そうとしているのである。

市長と知事がこの体たらくで、大阪はこの第5波で一体どうなってしまうのか。ともかく、いまは万博の話などしている場合ではないことだけはたしかだ。
(伊勢崎馨)

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