災害備え要支援者名簿作成 日南・稲山さん

板敷1区には土砂災害などが発生しやすい場所があることを指摘する稲山富保さん

 日南市板敷の防災士稲山富保さん(72)は、台風や大雨などの災害時に地区民の安否確認や避難誘導に役立てるため、要支援者名簿を作成して運用している。昨年の台風襲来時には名簿の連絡網を利用した避難も実際に行われ、今後も加入者の増加を目指している。
 稲山さんは「地域への恩返しがしたい」と、2018年に防災士の認定を取得した。稲山さんの住む板敷1区は約230世帯が生活し、約6割が高齢者世帯。土砂災害が起きやすい場所が多く、地区の中心を酒谷川の支流が流れている。
 地区には自主防災組織もあるが、災害時に機能していないことを問題視。18年、避難に役立てるために市総務・危機管理課の協力を得て要支援者名簿を作成した。記入カードには住所、名前、電話番号のほか、緊急時の連絡先などを記す項目がある。名簿への加入を勧めるため稲山さんが各世帯を回り、現在は約50世帯が加入。そのうち約20世帯は1人暮らしという。普段は稲山さんが管理し、災害時に警察や消防、行政などに開示される。
 名簿を元につくった「声かけグループ」では加入者を数班に分け、災害時の連絡態勢を決めている。19年の大雨時の同地区の避難は4世帯だったが、昨年の台風10号襲来時には18世帯が避難。稲山さんは名簿が避難の啓発につながっているとみる。高齢の親が同地区に住む市外の家族らからは「災害時の不安があったが、(こうした態勢は)大変助かる」という声も上がっている。また、今年からは板敷1区自治会の「防災士便り」も配布。市が作成した「警戒レベル」のチラシとともに回覧板で周知している。 稲山さんは「今後も高齢者を中心に名簿への加入促進を図っていく。こうした取り組みが他の地区にも広がってほしい」と話している。

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