<社説>緊急事態宣言延長 国会開き議論を尽くせ

 新型コロナウイルスの感染爆発が止まらない。政府は沖縄県などへの緊急事態宣言を9月12日までに延長し、宣言を発令する対象地域も13都府県に拡大した。 感染力の強いデルタ株が猛威を振るう中で、人流を徹底して抑える取り組みが不可欠だ。だが、必要な法整備や財源を早急に議論する必要性がありながら、政府からは宣言を延長する以外に策のない手詰まり感しか伝わらない。

 政権のコロナ対策への批判に向き合おうとしない菅義偉首相の姿勢こそが、国民の意識の緩みを招いている。現状に対する危機感が本物であれば、政府は直ちに臨時国会を召集し、与野党を超えた国民的議論に応じるべきだ。

 沖縄県では18日に、人口10万人当たりの新規感染者数が310.32人と初めて300人を超え、全国最悪の状況が続いている。本島では重症者と中等症患者を受け入れる病床が一時的に満床になる事態も出ている。医療提供体制が逼迫(ひっぱく)し、一般医療や救急搬送にも支障が生じている。

 感染拡大を受けて多くの学校で夏休みが延長される方向だ。このまま手をこまぬいていれば、医療だけでなく、子どもたちの学びの機会にも影響が及んでしまう。

 県外との往来に起因する「移入例」も増加が見られる。4月以降に来県した人への県のアンケートで、出発地でPCR検査を受けたのは47.3%にとどまり、半数超は事前検査を受けていない実態が明らかになった。

 県や市町村の呼び掛けによる往来自粛や任意の検査だけでは、感染症の移入を水際で阻止する対策として限界がある。来県前検査による陰性やワクチン接種の証明を搭乗時に義務付けるなど、必要な法整備を検討する必要があるのではないか。

 厚生労働省に助言する専門家組織の脇田隆字座長は、沖縄での感染状況について「個人の自粛だけでは難しい」とし、「ロックダウン(都市封鎖)」などの法規制の検討が必要という認識を示した。

 ロックダウンは移動や営業の自由といった私権の制限を伴う対策だ。対策の有効性や範囲をどうするか、私権制限に対する補償は十分なのかといった法的な検討は、国民の代表でつくる国会の場で大々的に論じるべきだ。

 菅首相がワクチン接種を頼みの綱とするならば、供給や接種率が進まない課題について、党派を超えて有効な手だてを寄せ合う必要がある。

 野党は7月に国会召集の要求書を出したが、政府与党は応じていない。憲法は衆院か参院の総議員の4分の1以上が要求した場合、内閣は臨時国会の召集を決定しなければならないと規定する。国会を開かない政府の対応は、憲政の常道からも外れている。

 沖縄は20日から旧盆を迎える。従来のような親戚宅への訪問や同居家族以外での飲食は控えてもらいたい。

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