調査書の様式が再び変わる 令和7年度(2025年)度入試での様式変更内容は?

高大接続改革により2021年度入試から調査書に記載される情報量が増えました。高校の現場の負担は重くなりましたが、改革初年度の入試を終えて、これまでよりも多面的な評価が行われたという話は寡聞にして存じません。そんな中、7月30日に文部科学省から令和7年度(2025年度)入試の調査書についての変更を含む通知※が発出されました。この通知名は非常に長いので以下は通知としますが、高校の現場はまたしてもこれに対応しなければなりません。その調査書を受け取る大学も変更点を知っておくことが必要でしょう。

※「令和7年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト実施大綱の予告」及び「令和7年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告」について(通知)

観点別評価の記載はひとまず保留に

次期学習指導要領では、現在とは教科・科目に様々な変更があります。高校では歴史総合、地理総合、公共や情報Ⅰの新科目など話題に事欠きませんが、これまで小学校、中学校で行われてきた観点別評価が導入されることもポイントの一つです。観点別評価と聞くと、挙手の回数などをカウントして評価するなどの言説が流布していますが、こうした評価方法は明確に否定されています。中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」(2019年1月21日)の中でも、「挙手の回数や毎時間ノートを取っているかなど、性格や行動面の傾向が一時的に表出された場面を捉える評価であるような誤解が払拭し切れていない」と述べられているように誤った評価方法なのです。このような誤解は学校の現場ではまだ根強いものがあると聞いていますが、この観点別評価が高校でも導入されることに加えて、調査書の基となる指導要録に各教科・科目の観点別学習状況を記載する欄が設けられることになり、調査書での扱いが注目されていました。しかし、当面は調査書に記載されないこととなりました。

これについて通知では、「今後の高等学校における観点別学習状況の評価の充実の状況、大学における観点別学習状況の活用方法の検討の進展等を見極めつつ、条件が整い次第可能な限り早い段階で調査書に項目を設けることを目指す」としています。実際には、評価結果を単純に点数化するなど特定の観点の評価結果だけを抽出したりするなど、多面的・総合的な評価の趣旨に沿わない活用が入学者選抜で行われることを危惧したためだろうと推測されます。こうした評価の活用方法は、大量のデータの加工が容易になる調査書の電子化とも関連していると思われますが、多くの受験生が入学したいと思うような大学は、そのような活用は恐らくしませんので杞憂に終わることと思います。

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現行の調査書は裏面の情報量が増え、高校現場の負担にも

高大接続改革による様式変更で、特に調査書の裏面に記載する情報量が増えて高校現場の負担も増しました。現行の様式では、調査書裏面の「指導上参考となる諸事項」が拡充され、記入欄が次の(1)から(6)の6項目に分類されています。

(1)学習における特徴等

(2)行動の特徴、特技等

(3)部活動、ボランティア活動、留学・海外経験等(具体的な取組内容、期間等)

(4)取得資格、検定等(専門高校の校長会や民間事業者等が実施する資格・検定の内容、取得スコア・取得時期等)

(5)表彰・顕彰等の記録(各種大会やコンクール等の内容や時期、科学オリンピック等における成績、時期、国際バカロレアなど国際通用性のある大学入学資格試験における成績・時期等)

(6)その他(生徒が自ら関わってきた諸活動など)

従来は上記の複数項目をまとめて記入する様式でしたが、各項目別に学年別に記入蘭が設けられています。これに加えて、「総合的な学習の時間の内容・評価」、「特別活動の記録(ホームルーム活動、生徒会活動、学校行事)」の記入欄もあるため、これまでと比べて格段に記載される情報量が増加しました。さらに「備考」欄には、大学が指定する特定の分野(保健体育、芸術、家庭、情報等)の特に優れた学習成果を上げたことを記載するよう大学が募集要項で求めた場合には、高校はこれにも対応しなければならないことになっています。調査書の情報量が増えれば入学者選抜で多面的・総合的な評価が行われると想定していたのでしょうが、今のところ想定通りになったという話は寡聞にして存じません。

調査書の枚数も1枚に戻り、裏面もほぼ以前に戻る

では、通知で示された調査書様式はどのように変更されるのでしょうか。まず、調査書の枚数ですが、現行は任意、つまり何枚でも良いとされています。豊かな活動歴のある生徒の長所を複数枚にわたって丁寧に記載することもできるようになっていますが、これが表裏の両面1枚と元に戻りました。複数枚というのは、調査書を受け取る側にとっても使いづらいのが現実です。この他の変更点として、前述の「指導上参考となる諸事項」は学年別に(1)から(6)の6項目を記載する書式が、また変更されてこの6項目の分類がなくなり、学年毎に記入欄が設けられただけのシンプルな形式になります。かつて項目別に記入欄が分けられた時には、総合型選抜・学校推薦型選抜の際に、より丁寧に評価しやすくなるという触れ込みでしたが・・・。しかも、「要点を箇条書きするなど、その記載内容を必要最小限にとどめる」ようにとの指示がなされています。さらに、生徒会や学校行事などの「特別活動の記録」蘭は、文章ではなく「○」印を記入するだけになります。この辺りの変更は批判的に受け止められるかも知れませんが、現場(高校も大学も)の負担は軽減されます。

→次ページ「総合的な探究の時間の記録」記入欄の細分化

一方で、「総合的な探究の時間の記録」は、現行の活動内容と評価の2つを記載する書式から、学習活動、観点、評価の3つを記入するように記入欄が細分化されています。ここでは生徒が行った学習活動、各学校が定めた評価の観点、顕著な特徴、生徒にどのような力が身に付いたか、などを端的に記入することが求められています。この「総合的な探究の時間の記録」は各学校による違いが表れると思われますので、総合型選抜・学校推薦型選抜の出願書類(志望理由書、推薦書等)と関連づけられると大学側は評価がし易くなります(評価も高くなる?)。

このほか、「備考」欄には、特定の分野(保健体育、芸術、家庭、情報等)での優れた成果を記載するよう大学が求めることができることに変わりはありませんが、これらの事項については調査書以外の資料で、志願者本人から直接大学に提出させることが想定されています。これは一見すると高校の先生の負担が軽くなるように見えますが、生徒は大学に提出する書類は必ず先生にチェックや意見を求めてきますので、高校現場の負担はあまり減らないことが予想されます。いずれにしても、現行の様式は4年間で終了し、豊かになった調査書の情報量は再びシンプルになります。新しい様式は下記の文部科学省のサイトで確認ができます。

文部科学省 大学入試情報提供サイト

(別紙2)令和7年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告(PDF:974KB)

https://www.mext.go.jp/content/20210729-mxt_daigakuc02-000005144_3.pdf

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