藤浪の“159キロ打ち”に漂うスターの予感… DeNA・森が阪神3連戦で残した爪痕

DeNA・森敬斗【写真:荒川祐史】

バント空振りを猛省「試合をイメージして練習しているのか見つめ直したい」

■DeNA 5ー4 阪神(20日・東京ドーム)

19歳のスター候補が飛び出した。DeNA2年目の森敬斗内野手は、17~19日に東京ドームで行われた阪神3連戦すべてに「2番・遊撃」でスタメン出場。17日に5打数3安打でプロ入り後初の猛打賞を獲得すると、19日には相手先発・藤浪晋太郎投手の159キロ速球を右前適時打に。くっきりと爪痕を残した。

19日の初回無死一塁で第1打席を迎えた森。初球が暴投となり、一塁走者・桑原が二塁へ進塁した後、カウント2-1から内角をえぐる159キロを一閃。打球は一、二塁間を破り、先制点をもぎ取った。さらに一塁走者となった森が続く佐野の4球目にスタートを切ると、ランエンドヒットが的中して右翼線適時二塁打となり、悠々とホームを駆け抜けた。

2回1死一、二塁での第2打席も、やはり内角低めの154キロを右前へ。この日4打数2安打で、剛速球への対応力が光った。「当てにはいかず、コンパクトにしっかり振った結果がヒットになりました。速くて球の強い投手に対して、いいバットの出し方ができたと思います」。試合後、力強くうなずいた。

2019年ドラフト1位で神奈川・桐蔭学園高から入団。1年目の昨季はシーズン終盤の10月27日に1軍昇格し、8試合で打率.250(12打数3安打)の数字を残した。今季は開幕1軍を逃したが、7月10日に1軍に上がると、8月19日現在で打率.323(31打数10安打)の猛打を振るい、プロ16年目の大和と遊撃の定位置を激しく争う立場に躍り出た。

4打数ノーヒットに終わった18日も、9回には相手の守護神スアレスに対し、カウント1-2と追い込まれた後、158キロの速球にも140キロ台のチェンジアップにも反応してファウルで粘り、9球目を打って左飛に倒れた。その姿は首脳陣から高く評価された。いま1軍の打席で心掛けているのは「速い球に対しても自分のスイングをすること。甘い球は1発で仕留めること。2ストライクからも粘り、簡単に三振せず、ゴロで終わること」と言う。

三浦監督が「チームでトップクラス」とほれ込む走力

もちろん、失敗もあった。19日、1点リードの8回無死一、二塁で送りバントを命じられたが、カウント3-1から左腕・及川の内角速球を空振り。この瞬間、二塁走者・牧は大きく飛び出していた。捕手・梅野が二塁へ送球したのを見て、牧は判断良く三塁を陥れ、森もこの後四球で出塁して事なきを得たが、味方のチャンスを潰しかねないプレー。「ナーバスになって、いつも通りのことができなかった。練習不足が原因だと思います。本当に試合をイメージして練習しているのか、自分を見つめ直したいと思います」と猛省した。三浦大輔監督が「いい働きをしてくれていますが、もっともっと上を目指してほしい。今日も課題が出ましたから」と釘を刺したのも、大きな期待の表れに他ならない。

今季イースタン・リーグで16盗塁をマークしている快足の持ち主だが、1軍では7月11日の中日戦で1盗塁と1盗塁死を記録したのみ。三浦監督は「走力はチームトップクラス。そう簡単にバンバンいけるものではないが、『塁に出たら常に(盗塁を)狙っておけ』という話はしている」とほれ込む。森も「体が硬くなってスタートが切れないことがある。改善して足でも貢献できるようになりたいです」と意欲を見せる。

ズボンの裾を膝下までたくし上げた“オールドスタイル”は足をより長く見せ、躍動感にあふれている。目鼻立ちのはっきりしたマスクもあいまって、活躍が続けば人気が爆発するのは間違いない。19日に対戦した及川、佐々木朗(ロッテ)、奥川(ヤクルト)、今季パ・リーグトップの10勝を挙げている宮城(オリックス)らと同い年の同期入団で、出世争いも激しくなりそうだ。このまま一気にスターダムにのし上がるか。

【実際の映像を見る】藤浪の内角159キロ直球を右前適時打にしたDeNA森

【実際の映像】藤浪の内角159キロ直球を右前適時打にしたDeNA森 signature

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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