卓球(知的) 浅野俊(20) 長崎市出身 出るからには「金」を

卓球(知的)男子の浅野俊

 卓球が「しんどいな」と思う時、浅野俊は自分に言い聞かせる。「パラリンピックで活躍する姿を見せて、両親やサポートしてくれた人たちに恩返ししたい」。「頑張っているよ」と伝えるには、結果を出すのが一番。その一心で世界最高の舞台に初めて立つ。
 小学2年からラケットを握り、県の各種大会で優勝してきた。パラ卓球を知ったのは高田中の時。浅野の知的障害を考慮して「進路に役立つかもしれない」と、校長や担当教諭が熱心にアドバイスをしてくれた。
 健常者の大会で戦えるのに…。葛藤しながらも、知的障害の全国大会に参戦しだした。転機は瓊浦高3年の夏。仲間たちと目指したインターハイ出場を逃して落ち込んでいたころ。麻生豊成監督や両親に励まされ、知的障害クラスの日本一を競うジャパン・チャンピオンシップに出場した。
 県高総体に懸けてきた努力は身についていた。ここで初優勝を飾ると、自身初めての国際大会となったアジア選手権も制して東京パラの出場権を獲得。さらに障害者採用で入社が決まった東京の医療機器メーカー「PIA」が浅野のために卓球部をつくってくれた。
 フルタイムで働き、夕方から練習という社会人生活。最初は両立が難しかったが、2年目となった今は慣れてきた。各世代で全国入賞実績がある佐々木信也コーチや、関東の大学生、実業団選手を相手にするうちに、持ち味の強打に加えてプレーの幅も広がってきた。
 支えてくれた人たちのおかげで、つらいことも乗り越えて、ここまで来られた。だからこそ、東京パラに誓う。「出るからには金メダル」

 【略歴】あさの・たかし 横尾小2年から卓球を始めた。滑石中、転校した高田中までクラブチームでプレーして、瓊浦高に進学。療育手帳は中学時代に取得した。知的障害クラスのジャパン・チャンピオンシップで2020年に男子シングルス2連覇。21年7月1日時点の世界ランキングは9位。174センチ、81キロ。長崎市出身。

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