「もう少し縮めることもできた」とポール獲得のトヨタ小林可夢偉。ジャッキー・イクスの記録にも迫る/ル・マン24時間

 8月19日、WEC世界耐久選手権第4戦となる第89回ル・マン24時間レースの決勝スターティンググリッドを決定する『ハイパーポール』がフランスのサルト・サーキットで行われ、TOYOTA GAZOO Racing(以下TGR)の7号車GR010ハイブリッドがポールポジションを獲得。

 7号車の小林可夢偉は3分23秒900というタイムをマークし、新型ル・マン・ハイパーカー(LMH)、GR010ハイブリッドはハイパーカー時代初となるレースで、歴史にその名を刻んだ。TGRにとっては、ル・マン24時間レースで5年連続のポールポジションとなった。

 2017年の予選でサルト・サーキットのコースレコードを樹立している可夢偉は、自身4度目のポールポジション獲得。これにより、可夢偉はジャッキー・イクスが持つル・マン24時間レースでのポールポジション通算獲得回数記録にあと1回へと迫ることになった。

 8号車GR010ハイブリッドでアタックを担当したブレンドン・ハートレーは、7号車にわずか0.295秒及ばず2番手となった。TGRのGR010ハイブリッドの2台はグリッド最前列から21日の決勝レースをスタートする。

 ハイパーポールに先立ち、14時から公式練習3回目が3時間にわたって行われたが、セッション残り25分というところで、8号車を駆る中嶋一貴がインディアナポリスコーナーでタイヤウォールにヒット、車両後部にダメージを負った。

 8号車は残るセッションを走行できず、ハイパーポールへの準備を予定通りには完了できなかった。しかし、その後4時間にわたるインターバルで8号車は完璧に修復され、無事ハイパーポールのセッションに出走した。

 現地時間21時、まだ明るさは残っているものの、徐々に闇に包まれていくタイミングで、各カテゴリーの上位6台がスターティンググリッドを決定するハイパーポールの30分のセッションがスタート。

 2台のGR010ハイブリッドはともに新品タイヤを装着し、最小限の燃料搭載でコースインした。可夢偉はセッション開始と同時に目覚ましいペースでのアタックを見せ、コースがクリアな状況でトップタイムを叩き出す。

 ハートレーの最初のアタックラップは、コース上の他の車両に阻まれ、また、GT車両のアクシデントにより10分間ほどの赤旗中断となったことで、一旦仕切り直しに。セッションが再開されると、可夢偉、ハートレーともに再びニュータイヤで、さらなるタイム更新を狙ってコースに復帰する。

 可夢偉の1周目はベストタイムにわずかに及ばす、2周目は最速タイムを上回るペースでアタックを続けたものの、トラックリミット違反によりタイム更新はならなかった。

 一方のハートレーは連続して自己ベストタイムを更新していったものの、7号車のポールポジションタイムには約0.3秒届かなかった。

 セッション後半、2台はともにピットで待機しライバルチームのアタックを見守ったが、TGRのタイムを上回ることはなく、アルピーヌ・エルフ・マットミュートの36号車アルピーヌA480・ギブソンが1.674秒差の3番手となり、7号車のポールポジションが確定した。

 20日(金)は走行セッションこそないものの、チームにとっては休む間もない忙しい一日が続く。2台のGR010ハイブリッドはメカニックによって完全に整備し直され、エンジニアは決勝レースの戦略などの準備に集中する。89回目を迎える伝統のレースは、21日(土)現地時間16時(日本時間23時)にスタートが切られる。

 ハイパーポールでアタックを担当したTGRの2名のドライバーのコメントは、以下のとおり。

ポール獲得を喜ぶ7号車の3人。この写真の撮影直前、センターに入るよう促された可夢偉だったが、この日が誕生日のマイク・コンウェイにそのポジションを譲っていたように見えた

■「ギヤを一気にふたつ上げてしまった」とハートレー

●小林可夢偉

「ハイパーカーでの最初のポールポジションを獲得できたことは素晴らしいです」

「日曜日にGR010ハイブリッドでここル・マンを初めて走って以来、調整を続けてきたことで、着実な進化を遂げています。チームが最高の仕事で準備をしてくれたことが、このタイムにつながったと思います」

「もう少しタイムを縮めることもできたと思いますが、トラックリミットに引っかかってしまったのは残念です」

「1周での最速ラップが取れれば良いというものではなく、我々は決勝レースでの成功という目標に向けて準備を行ってきました。我々はここ数年で何度かのポールポジションを獲得していますが、決勝レースでは勝てていないので、この予選の結果は何も保証してくれるものではありません。24時間レースは長いですし、いつもあと少しの運が必要なのです」

●ブレンドン・ハートレー

「まず感激したのは、燃料搭載を少なくし、新品タイヤで、夜へ向かうコンディション下でのGR010ハイブリッドが素晴らしかったということだ」

「クルマの感触は文句なく、練習走行での一貴のアクシデントから迅速に修復してくれたチームに本当に感謝している。そして、素晴らしいアタックでポールポジションを獲得した可夢偉に祝福を送る」

「私自身は、アタックラップ中にミスしてしまったのでちょっと悔しい。7速へと一気にふたつギヤを上げてしまい、タイムをロスしてしまった。車両には差は無かったので、ポールポジション獲得のチャンスもあったと思う」

「さらに良いペースだった2度目のアタックではコース上の車両に阻まれ、万事休すとなった。残念な気持ちはあるが、最前列グリッドを獲得できたことは良かったし、7号車の結果も嬉しい」

ハートレーがアタックし、ハイパーポールで2番手タイムとなった8号車GR010ハイブリッド

© 株式会社三栄