クジラ漁妨害に備え訓練 太地町で海保

訓練で反捕鯨活動家のボートを追い掛ける海保のゴムボート(19日、和歌山県太地町太地で)

 和歌山県太地町で9月1日から小型鯨類の追い込み網漁が始まるのを前に、海上保安庁の第5管区海上保安本部は19日、同町の畠尻湾周辺で反捕鯨活動家による違法行為などを想定した訓練をし、強い雨が降る中、参加した約40人が対応を確認した。

 訓練には、同本部や田辺海上保安部、串本海上保安署などが参加。2011年から毎年この時季に続けているが、追い込み網漁の舞台となる畠尻湾での実施は今回が初めてという。

 この日は田辺海上保安部の上野春一郎部長が「抗議活動はSNSを使いリアルタイムで全世界に発信する形態に移行しているが、予断は許されない。訓練を通じてわれわれが毅然(きぜん)と事案に対処することを示し、地域の方々の安全安心に寄与したい」などと訓示。海保のゴムボートによる基本的な操船訓練に続き、町の条例によって漁期中は畠尻湾やその周辺で飛行が禁止されているドローンを飛ばしている活動家に注意を呼び掛けたり、カヤックから海に落ちた人を救助したりする対応を確認した。

 最後に取り組んだ訓練の想定では、3人の活動家が乗ったゴムボートが、湾内で作業をしている漁師の船に接近。「イルカを解放しろ」などと言いながら仕切り網をナイフで切断し、駆け付けた海保のゴムボートにもナイフを投げつけたことから、追い掛けて停船させて乗り込み、泳いで逃げた1人もヘリコプターから降下した機動救難士が確保し、器物損壊と公務執行妨害で現行犯逮捕した。

 訓練を見守っていた太地町漁協太地いさな組合の田中清仁組合長(54)は「大変に天候が悪い中で訓練をしていただき感謝している。コロナ禍もあって厳しい漁期になると思うが、町や警察、海保の皆さんの協力で何とか乗り越えていきたい」と話していた。

© 株式会社紀伊民報