山、海、街全体がアートの舞台。2021年下半期に訪れたい芸術祭11選

東京ビエンナーレ2020/2021(東京・北東部の6つのエリア、2021年7月10日〜9月5日)

9月5日まで開催中の東京ビエンナーレは、東京を舞台に2年に1度開催する国際芸術祭。世界中から幅広いジャンルの作家やクリエイターが東京のまちに集結し、まちに深く入り込み、地域住民と一緒に作り上げていく新しいタイプの芸術祭だ。会期後半の注目プロジェクトとしては270メートルにおよぶ絵画回廊が出現する、佐藤直樹《そこで生えている》、写真家の池田晶紀が「神田っ子」をモデルに2012年より取り組むポートレイト企画「いなせな東京 project」、新進アーティストの柳井信乃が湯島聖堂の空間を音の場と捉えるインスタレーション作品《Praying for Tokyo 東京に祈る─「Well Temperament 」》など。

公式サイトでは5つのジャンルの各プログラムの楽しみ方を「参加・体験型」「子連れおすすめ」「じっくり鑑賞」「しっかり学ぶ」「気軽に立ち寄り」「無料」「オンライン」の7のカテゴリーで紹介。目的や気分にあわせて気になる展示、イベントを見つけてほしい。

「東京ビエンナーレ2020/2021」より、西尾美也「着がえる家」の一部屋

山口ゆめ回廊博覧会(山口県の7つのエリア、2021年7月1日〜12月31日)

山口県の山口市、宇部市、萩市、防府市、美祢市、山陽小野田市、島根県津和野町の7つのエリアで「山口ゆめ回廊博覧会(通称:ゆめはく)」が12月31日まで開催中だ。コンダクターは、2005年にBEPPU PROJECTを立ち上げた山出淳也、クリエイティブディレクターはgraf 代表の服部滋樹。「7つの市町でつなぐ、7色の回廊」をコンセプトに、それぞれに市町が持つ伝統や文化、自然といった魅力を「芸術」「祈り」「時」「産業」「大地」「知」「食」の7つのテーマに分類し、そのテーマに沿ったイベント等を圏域全体で展開するというゆめはく。特別な場所で体験するアートと食のコラボレーションや、普段は見ることができない特別なまち歩きなど、地域の特徴を生かしたイベントが行われている。

宇部市では「指輪ホテル」演出家の羊屋白玉が料理人とタッグを組み、夜の植物館で演劇と食のコラボレーションを展開。山口情報芸術センター(YCAM)の特別企画展としては「坂本龍一 ART ENVIRONMENT LIFE 2021」、宇部市では、メディアアートで夜の遊園地を彩る「TOKIWA ファンタジア2021」など、地域の魅力を伝える企画が各地を彩る。

「山口ゆめ回廊博覧会」昨年の様子 Photo: AKITAKE KUWABARA

今年の越後妻有(越後妻有里山現代美術館 MonET、まつだい「農舞台」フィールドミュージアムなど、7月22日〜10月31日)

「大地の芸術祭」は、新潟県「越後妻有」の広大な里山を舞台に20年続く芸術祭。3年に1度開催される「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」が有名だが、それだけでなく、通年を通して四季折々のプログラムを開催されている。冬は雪あそびができる企画展、「越後妻有 雪花火」など雪を使ったイベントや作品、山菜や雪見御膳といった季節の食材を使ったランチ、廃校や作品に泊まれる宿泊施設、それらすべてを堪能できるオフィシャルツアーなど、盛りだくさんなプログラムが魅力。

また今夏、「越後妻有里山現代美術館 MonET(モネ)」(旧・越後妻有里山現代美術館[キナーレ])と、まつだい「農舞台」の2大拠点施設がリニューアルオープン。「越後妻有里山現代美術館 MonET」は、名和晃平や現代アートチーム「目[mé]」など人気の現代美術作家を迎えてパワーアップし、越後妻有の拠点としてさらに地域に根付いた美術館に。まつだい「農舞台」は、大地の芸術祭を代表する作家、イリヤ&エミリア・カバコフの新作が4点加わり、常設作品もあわせてカバコフ作品が集結する他に例を見ない場所になった。

7月22日〜10月31日の期間で、それら2大拠点をいち早くチェックできる「今年の越後妻有」を開催中。

マ・ヤンソン/MADアーキテクツ《Tunnel of Light》(2018/2021) Photo: NAKAMURA Osamu

千の葉の芸術祭(千葉市内各所、2021年7月24日〜9月12日)

「変化/CHANGE」をテーマ、「アートでつながる アートでつなげる 自由なアートが人と社会をかえていく」をコンセプトに、市制100周年を迎えた千葉市初の芸術祭。9月12日まで行われる注目プログラムとしては、12名の写真作家が千葉で撮影した作品を千葉市内各所で発表するプロジェクト「CHIBA FOTO」。市内各所に点在する歴史ある建造物や、日々行き交う場所を舞台に展覧会が出現し、街の人々や風景の撮り下ろし、この土地の歴史、場所のもつ記憶をリサーチした作品が集まる。参加アーティストは新井卓、宇佐美雅浩、金川晋吾、川内倫子、北井一夫、蔵真墨、佐藤信太郎、清水裕貴、楢橋朝子、本城直季、横湯久美、吉田志穂。

Asako NARAHASHI, Chibaminato, 2019

Reborn-Art Festival 2021-22(石巻市街地、牡鹿半島、女川駅周辺など、[夏会期]2021年8月11日~9月26日[春会期]2022年4月23日~6月5日)

2年に1度開催されてきたアート・音楽・食 の総合芸術祭。今年は2021年夏と2022年春の2期に分けて開催される。東日本大震災から10年目の節目となる今年のテーマは「利他と流動性」。夏会期のキュレーターにはインディペンデント・キュレーターの窪田研二を迎え、廣瀬智央、HouxoQue、大友良英、片山真理、雨宮庸介、髙橋匡太、会田誠、オノ・ヨーコ、加藤翼、サエボーグ、岩根愛、小林万里子、布施琳太郎、志賀理江子+栗原裕介+佐藤貴宏+菊池聡太朗など23組のアーティストが参加。過去のリボーンアート・フェスティバルで発表された、名和晃平の『White Deer(Oshika)』や島袋道浩の『白い道』なども引き続き見ることができる。TABではレポートも公開中。

名和晃平 White Deer(Oshika) © Reborn-Art Festival - Reborn-Art Festival 2021-22 参考画像

奥能登国際芸術祭2020+(石川県珠洲市全域、2021年9月4日~10月24日)

2020年秋に予定されていた「奥能登国際芸術祭2020+」が、新型コロナウィルスの影響により2021年秋に延期。「奥能登国際芸術祭2020+」として開催されることが決定した。16の国と地域からアーティストが集まり、本来より長い準備時間を通してより深く地域に入り、土地の力に呼応する作品を発表する。出品アーティストは青木野枝、浅葉克己、阿部海太郎、カルロス・アモラレス、石川直樹、磯辺行久、今尾拓真、シモン・ヴェガ、大岩オスカール、大川友希、尾花賢一、OBI、ディラン・カクら53組。うち47組は新作を発表する。

塩田千春《時を運ぶ船》 ©JASPAR,Tokyo,2021, and,Chiharu Shiota

ALTERNATIVE KYOTO─もうひとつの京都─想像力という〈資本〉(京丹後、宮津・天立橋、与謝野など京都7エリア、2021年9月24日〜11月7日)

「想像力を持つアートが新たな資本として来るべき社会を変えて行く可能性」をコンセプトに、日本三景の一つに数えられる天橋立や、石清水八幡宮、福知山城公園など京都の名所を含む6つのエリアを舞台に開催される。参加アーティストはSIDE CORE、石毛健太、BIEN、ヤノベケンジ、池田亮司、ANOTHER FARM、荒木悠、小山渉、石川竜一、島袋道浩など。会期中、国立京都国際会館イベントホールでは現代アートに特化した日本最大級の国際的なアートフェア「Art Collaboration Kyoto」(2021年11月5日〜11月7日)も実施。

「ALTERNATIVE KYOTO 2020─現実と空想のはざまで」、齋藤達也《Double Horizon》(2020) - ALTERNATIVE KYOTO─もうひとつの京都─想像力という〈資本〉 参考画像

六甲ミーツ・アート芸術散歩2021(六甲ガーデンテラス、六甲高山植物園、風の教会など六甲山上各所2021年9月11日~11月23日)

2010年に始まった「六甲ミーツ・アート芸術散歩」は、現代アートとともに六甲山の魅力をより多くの人々に知ってもらうための展覧会。これまでに400組を超えるアーティストが参加し、12回目の開催となる本年もアートと出会う発見や驚きとともに「新しい六甲山の魅力」を伝える。参加作家は飯沼英樹、イムラアヤコ、岩谷雪子、大木土木と…、鹿嶋理英子、勝川夏樹、河原雪花、C.A.P.(特定非営利活動法人 芸術と計画会議)、束芋、明和電機など34組。

期間限定で六甲高山植物園とROKKO森の音(ね)ミュージアム(旧六甲オルゴールミュージアム)では夜間延長営業を行い、夜にのみ鑑賞できる作品を公開。またライトアップされて違った趣を見せるアート作品と紅葉を鑑賞する「ザ・ナイトミュージアム~夜の芸術散歩~」も行われる。

髙橋匡太《Glow with Night Garden Project in Rooko 提灯行列ランドスケープ》(2019) 六甲高山植物園

北アルプス国際芸術祭(長野県大町市、2021年10月2日~11月21日[パフォーマンス作品を鑑賞できるのは8月21日~10月3日])

総合ディレクターを北川フラムが務め、今年第2回を迎える北アルプス国際芸術祭のコンセプトは「水・木・土・空 ~土地は気配であり、透明度であり、重さなのだ~」。日本列島の中心・フォッサマグナが走り、扇状地に囲まれた長野県大町市は、水によって育まれた豊かな森と生活文化をもち、山の気配と里の日常が重なり合う地域。そんな自然豊かな地域でアジア、ヨーロッパの国々に加え、中南米やアフリカなど11の国と地域から38組のアーティストが39点(内パフォーマンス5点)の作品を展示する。

参加アーティストはジミー・リャオ(幾米)、ドナルド・ワッスワ、蠣崎誓、ニコラ・ダロ、麻倉美術部、淺井裕介、地村洋平、本郷毅史、原倫太郎+原游、渡邊のり子、布施知子、ポウラ・ニチョ・クメズ、宮永愛子、コタケマンら。地元ガイドとともに作品を巡り、信濃大町の食、歴史、文化、自然も楽しむことのできるオフィシャルツアーもおすすめだ。

目《信濃大町実景舎》 Photo by Tsuyoshi Hongo

紀南アートウィーク2021 -籠もる牟婁 ひらく紀南-(和歌山県紀南地域、2021年11月18日〜11月28日)

和歌山県紀南地域の様々な場所や施設を舞台に行われる今年初開催の芸術祭。紀南地域の歴史的・文化的資産を現代に蘇らせることを目指す。アートコレクターであり、横浜美術大学学長、森美術館理事を務める宮津大輔をアーティスティック・ディレクターに迎え、アートだけではなく文化や風俗に関するシンポジウムや、教育機関や博物館との共同ワークショップなども行う。参加アーティスト・会場詳細は公式ウェブサイト・SNSで随時更新中。

また、開催期間中に留まらない活動を通して、地域の魅力を発信することにも力を入れており、上記シンポジウムのアーカイブや、地域の様々な産業従事者との対談などをウェブサイトに公開。記事はすべて翻訳され、日英バイリンガルで発信する。

紀南アートウィーク2021 ロゴ画像

国東の作品展示(国東半島の各所、通年展示)

国東半島では、2014年に「国東半島芸術祭」で展示された作品がそのまま土地に根付いているため、芸術祭ではなくとも通年で作品を見ることができるおすすめエリアだ。例えば、千燈地区の山の頂上近くにはアントニー・ゴームリーの《ANOTHER TIME XX》(2013)、成仏地区の森の中では岸壁一面に広がる宮島達男の《Hundred Life Houses》(2014)を見ることができる。また豊後高田市長崎鼻エリアにはオノ・ヨーコによる《見えないベンチ》(2013)をはじめ、多くの作品が点在する。詳細はBEPPU PROJECTにお問い合わせを。

オノ・ヨーコ《見えないベンチ》(2013) 撮影:久保貴史 ©︎国東半島芸術祭実行委員会
アントニー・ゴームリー《ANOTHER TIME XX》(2013) 撮影:久保貴史 ©︎国東半島芸術祭実行委員会

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