【パラヒーローズ】柔道・広瀬順子 選手兼任コーチの夫・悠と二人三脚で金目指す

視覚障がい者柔道に取り組む広瀬(左)(SMBC日興証券提供)

【R e start パラヒーローズ その壁を乗り越えろ(38)】二人三脚で頂点取りだ。視覚障がい者柔道女子57キロ級代表の広瀬順子(30=SMBC日興証券)は、2016年リオ大会で銅メダルを獲得。男子90キロ級代表で夫・悠(同)のサポートを受けながら己の技術を磨き、24日に開幕する東京大会で金メダルを目指す。

「運動神経が悪くても力や他の部分で補ったりすれば、勝てる可能性がある点が楽しかった」。小学5年の時に柔道が題材の少女漫画「あわせて1本!」の主人公に憧れて柔道を始めると、高校時代にはインターハイ出場を果たした。

しかし、大学1年時に膠原病の一種である成人スティル病の合併症により視力が低下。約半年間の入院生活中は、集中治療室(ICU)で治療を受けたこともあったという。それでも、退院後は「つらいことはたくさんあったが、やっぱり生きていることがすごく幸せなことだと感じていたので、目が見えにくくても、毎日楽しく生きようと決めた」と前を向いた。

高校卒業後は柔道から離れていたものの「もう一度自分が一生懸命になれるものが欲しいと思った。たまたま大学生の時にゴールボールの試合の手伝いに行った際に、選手たちがすごく楽しそうに競技をしているのを見て、自分もあんなふうに柔道をしたいという気持ちになった」と視覚障がい者柔道をスタート。当初は組み合った状態で試合を行うスタイルに苦戦しながらも「自分の中で力の入れ方とか技のかけ方とかに工夫を重ねた」。試行錯誤の末、16年リオ大会で銅メダル、18年W杯では金メダルに輝いた。

ただ、満足はしていない。選手兼任コーチで夫・悠のアドバイスを受けながら、新型コロナウイルス禍で東京大会が1年延期となった期間を有効活用。筋力トレーニングでパワーアップに努めた。さらに、男子選手と練習をする中で「力強い技をずっと受けてきたので、試合で技をかけられた時の防御面がすごく強くなった」と手応えを口にした。

夫婦でそろって出場する東京大会では、リオ大会を上回る結果を狙う。「2人とも後悔しないような、自分の力を出し切る試合がしたい。練習してきたことを出し切った試合が金メダルにつながるように、精一杯頑張りたい」ときっぱり。聖地・日本武道館に「君が代」を響かせる準備はできている。

☆ひろせ・じゅんこ 1990年10月12日生まれ。山口県出身。小学5年から柔道を始めると、高校時代にはインターハイに出場。大学1年時に膠原病の一種である成人スティル病の合併症により視力が低下。一度は柔道から離れたが、2012年に視覚障がい者柔道へ転向。16年リオ大会では、日本人女子選手で初となる銅メダルを獲得した。15年に結婚した男子90キロ級の夫・悠(はるか)は、選手兼任コーチを務めている。リオ大会に続き、東京大会でも夫婦で出場予定。158センチ、57キロ。

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