雨のなか2021年ル・マン24時間がスタート。8号車トヨタが追突される波乱の幕開けに/決勝1時間後

 8月21日(土)、2021年WEC世界耐久選手権第4戦/第89回ル・マン24時間レースの決勝がスタート。雨のなかセーフティカーラン・スタートとなったレース最初の1時間を経過した時点では、TOYOTA GAZOO Racingの7号車トヨタGR010ハイブリッド(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス組)が総合トップに立っている。

 18日(水)に開幕した“世界三大レース”のひとつに数えられるフランス伝統の耐久レースは、計4回のプラクティスと予選、ハイパーポール、そして決勝日午前中のウォームアップを経て、24時間の決勝を迎えた。レース前のセレモニーで、ここル・マンで2度の総合優勝を果たしたフェルナンド・アロンソによるアルピーヌF1のデモランなどが行われていくなか、グリッドウォークの最中に降り出した雨がサルト・サーキットの路面を濡らしていく。

スターティンググリッドでウォール越しに会話するトヨタの小林可夢偉と、アルピーヌのデモランのためル・マンを訪れていたフェルナンド・アロンソ

 フェラーリのジョン・エルカーン会長によるフランス国旗振動が行われた現地16時のスタート時には完全なウエット路面となり、依然として雨がフル続くことから通常のフォーメーションラップに加え、2周のエクストラ・フォーメーションラップが行われていく。

 時計のカウントが始まってから13分後、7号車トヨタを先頭とする61台のマシンの隊列を先導していたセーフティカーがトラックを外れ、レースは実質的なスタートを迎える。直後、1コーナー先のダンロップ・シケインでアクシデントが発生。4番手グリッドからスタートした708号車グリッケンハウスが2番手スタートの8号車トヨタGR010ハイブリッドに追突し、セバスチャン・ブエミの8号車がスピン。オープニングラップから順位を大きく落とすことになってしまう。また、同じ場所ではLMGTEプロクラスのポールシッター、ハブオート・レーシング72号車ポルシェ911 RSR-19も他車に接触されスピンしている。

 8号車にヒットしたオリビエ・プラ駆る708号車はフロントカウルを損傷したものの、レースを続行する。その後、同車には接触に対する10秒ストップペナルティが科せられた。

 このアクシデントの他にもウエット路面のトラック上では各所でスピンやコースオフが相次ぐ。そんななか8号車トヨタはコース脇に一時的にストップした後に再始動を図るシーンが見られ、同じオープニングラップではアルナージュ・コーナーでオーバーシュートを喫しているが、コースに復帰している。

 8号車トヨタが後退した一方、ポールシッターの7号車トヨタは首位をキープ。その後ろには3番手スタートから順位を上げたアルピーヌ・エルフ・マットミュートの36号車アルピーヌA480・ギブソンが続く。

雨のなかでスタートを迎えた第89回ル・マン24時間レース

■追突された8号車トヨタが上位に復帰

 スタートから21分後、その36号車のニコラ・ラピエールがインディアナポリスでスピンを喫し、ポジションを落とす。これで709号車グリッケンハウス007 LMH(グリッケンハウス・レーシング)が総合2番手に浮上した。アルピーヌはLMP2の集団の中でレースに復帰している。

 スタート前に降り出した雨が止み、レース開始30分後には徐々に路面が乾き始めレコードラインができてくる。こうなるとスタート時に履いたウエットタイヤからドライ用路面用のスリックタイヤに履き替えるうチームが出始める。

 トップクラスのハイパーカークラスでは、総合2番手を走る709号車が40分過ぎ、9周目にピットイン。LMP2マシンに交わされ総合4番手に順位を下げた僚友708号車も翌10周目に1回目のピットに入り、タイヤ交換と給油に加え前述のペナルティを消化する。

 トップを行く7号車トヨタは11周目にピットに入り、総合首位の順位を守ってコースに復帰した。オープニングラップに遅れを取った8号車は、その1周前にドライタイヤに履き替え挽回を図る。もっとも長く引っ張ったのは36号車アルピーヌで、こちらは12周目にピットへ向かった。

 雨中のスタートから一転、乾きつつある路面に日の光も差し始めた今年のル・マン24時間レース。決勝1時間時点でのトップはコンウェイ駆る7号車トヨタで、その後方2番手にLMP2首位にJOTAの38号車オレカ07・ギブソンが47秒差でつけている。

 総合3番手はハイペースで追い上げ中の8号車トヨタで、首位7号車とのギャップは60秒。36号車アルピーヌは、ニック・デ・フリース駆るGドライブレ・レーシングの26号車アウルス01・ギブソンを挟んで総合4番手につける。前を走るLMP2車との差は5秒、トップとのギャップは75秒だ。

 グリッケンハウス勢は708号車が総合11番手、709号車が総合14番手に下がったがその後、徐々に順位を上げている状況だ。
 
 LMGTEクラスではポールシッターの72号車ポルシェが順位を下げた後、コルベット・レーシングの64号車と63号車のシボレー・コルベットC8.Rがワン・ツー体制を築くが、雨が弱まってくるとフェラーリ勢が速さを見せ、今度はAFコルセの52号車と51号車フェラーリ488 GTE Evoがトップ2を独占した。
 
 しかし、1時間経過時点ではピットストップで再逆転した64号車コルベットが首位に。52号車フェラーリが2番手、ウェザーテック・レーシングの79号車ポルシェ911 RSR-19が3番手、ともに僅差で続いている。
 
 LMGTEアマクラスは、ポールシッターのデンプシー・プロトン・レーシング88号車ポルシェ911 RSR-19を交わしたAFコルセの83号車フェラーリ488 GTE Evoがクラストップに立っている。88号車が10秒差のクラス2番手、アイアン・リンクスの80号車フェラーリ488 GTE Evoがそこから2秒後方のクラス3番手となっている。
 
 同クラスを戦う日本勢は、木村武史組のケッセル・レーシング57号車フェラーリ488 GTE Evoはクラス8番手を走行中。星野敏と藤井誠暢のDステーション・レーシング777号車アストンマーティン・バンテージAMRはクラス15番手だ。

 賞典外の特別枠“ガレージ56”から、長年の夢であったル・マン参戦を叶えている元GPライダー、青木拓磨組の84号車オレカ07(アソシエーションSRT41)は総合23番手につけている。

8号車トヨタGR010ハイブリッドに追突したことで、フロントカウルにダメージを負った708号車グリッケンハウス007 LMH

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