5点差を守れずに痛恨の逆転負け 優勝争いから一歩後退した鷹ベンチのチグハグ

ソフトバンク・工藤公康監督【写真:藤浦一都】

6回までは理想的なゲーム展開も終盤に一気に崩れて、首位オリックスと5.5差に

■ロッテ 8ー6 ソフトバンク(21日・PayPayドーム)

ソフトバンクは21日、本拠地PayPayドームでのロッテ戦に6-8で逆転負けを喫した。6回まで5点のリードを奪いながら、7回に一挙5失点。同点の9回には前夜3点を失ったクローザーの岩嵜がまたも3点を失って勝ち越しを許した。痛恨の連敗となり、首位オリックスとの差は5.5ゲームに開いた。

6回まではほぼ完璧なゲーム運びだった。2回にデスパイネの2号ソロで先制。6回にはそこまで好投を許していた美馬を攻略し、栗原の走者一掃の適時二塁打、中村晃の適時打で一気に4点を追加。リードを5点に広げ、あとは逃げ切るだけ、のはずだった。

流れが急変したのは7回だった。先頭の山口のゴロが二塁内野安打となり、さらに三森が悪送球。先発の石川がエチェバリアに四球、岡にも中前安打を浴びて満塁とされた。藤岡は二飛に仕留めたが、ここでバトンを受け取った嘉弥真が代打・角中に押し出しの四球。さらに3番手の甲斐野が藤原に右翼フェンス直撃の2点適時二塁打、中村奨に左前への2点適時打を浴びて同点に追いつかれた。

「嫌なイメージを払拭するには投げて抑えて帰ってくること」と岩嵜を9回に送るも…

9回には前夜負け投手となっていた岩嵜を再びマウンドへ送ったが、これが裏目に出た。工藤公康監督はこれまでも救援に失敗した投手にすぐにリベンジの機会を与えてきた。この日も「嫌なイメージを払拭するには投げて抑えて帰ってくることが何よりも次に繋がる」との狙いで送り出したが、右腕はレアードに適時内野安打を許して勝ち越されると、代打・佐藤都には2ランを被弾。連日の3失点を喫してチームは痛恨の敗戦となった。

とにかくチグハグさが際立つ試合だった。投手の継投が裏目となったのも1つだが、同点に追いつかれた後の8回の攻撃もそう。先頭の柳田がシフトを破る左前安打を放って出塁。勝負をかけ、主砲に代走の周東を送った。周東は続く栗原への初球で盗塁に成功。ここまでは狙い通りの形だった。無死二塁で栗原にベンチが出した策は送りバントだった。6回には走者一掃の適時二塁打を放ち、後半戦に入り、打撃の状態が上向きつつある4番にバントを命じ、これが裏目に出た。

2球目の外角のボール球に対し、栗原はギリギリのところでバットを引いて見送った。ここで周東の離塁が大きくなったのを、ロッテの田村が見逃さなかった。二塁への牽制球で周東はタッチアウト。無死二塁の絶好機が1死走者なし、へと一変した。直後に栗原が右翼線への二塁打を放って出塁するも、デスパイネへの4球目で仕掛けた三盗が失敗に。相次いで勝ち越しのチャンスを逃した。

9回のチャンスで真砂に代打アルバレスを送り凡退、周東は見逃し三振

工藤監督は周東の走塁死に対し「野球の中において結果が出た以上、言われるのはしょうがないかなと思います。ただ、彼自身もサードでセーフになりたい、どんなバントでもセーフになるとリードオフをとったと思うので、成長につなげる、何よりそこが大事と思う」と庇ったものの、なぜチャンスに強い栗原にバントだったのか。まだ無死。二塁走者は周東でワンヒットで十分に本塁まで返ってこられる脚を持つ。栗原のあとは、デスパイネ、中村晃とここ最近、調子の上がってきた打者たちの並び。3人の中でワンヒットを、と期待してよかったのではないか。

3点を追う9回の攻撃もそうだ。先頭の今宮が左前安打で出塁、1死から代打・長谷川が右前安打で続き、1死一、三塁に。三森が中前適時打で続いて1点を返し、なおも1死一、二塁と長打で同点、本塁打なら逆転サヨナラというチャンスとなった。ベンチに残る野手は新助っ人のアルバレスだけだった。

ここで打順は途中出場だった2番の真砂へと巡ってきた。続くのは、こちらも途中出場の周東。ここでソフトバンクベンチは一発のある真砂に代えて、代打アルバレスを送った。助っ人は右飛に倒れ、そのまま打席に立った周東は見逃し三振。これでゲームセットの時を迎えた。それぞれの打力や打撃の状態を考えれば、周東のところアルバレスを代打で送る多くの人が思った策ではなかったか。長打のある真砂への代打はどうにも解せなかった。

ソフトバンクにとって痛すぎる1敗だ。中盤まで大きくリードしながら、リリーフ陣がつかまり、チグハグな戦いぶりで喫した逆転負け。首位オリックスには5.5ゲーム差をつけられた。理想的な後半戦スタートを切ったはずが、この1敗で2年連続のリーグ優勝へ状況は一気に厳しさを増してきた。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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