タイガーマスクの“異次元”身体能力 前田日明と競い合ったクラッププッシュアップの数

クラッププッシュアップを披露するタイガーマスク。なんと5回手を叩いて見せた(83年6月、土肥温泉)

【プロレス蔵出し写真館】1981年(昭和56年)4月23日、東京・蔵前国技館でダイナマイト・キッドを相手にデビュー戦を行った初代タイガーマスクが、40周年を迎え記念イベントを開催した。

キッド戦では初めて見るムーブに観客は驚き、一夜にしてタイガーマスク人気が爆発した。タイガーの類まれな身体能力の高さは多くのファンに周知されている。

そして、それは試合以外でも披露された。

82年に公開された映画「ロッキー3」で、主人公ロッキー・バルボア役のシルベスター・スタローンが、腕立て伏せをしながら空中で手を叩くというシーンがあった。これは腕立て伏せをした後に床を押し、床から手を離し空中で手を叩くクラッププッシュアップと呼ばれる腕立て伏せのバリエーション(当時はジャンピングプッシュアップなどとも言われた)。

ある時、タイガーにその話題を振ると「できますよ」と即答して、空中で3回叩いて見せてくれた。

そして、83年6月24日に西伊豆・土肥温泉での夏季強化合宿では、前田日明との掛け合い漫才風にクラッププッシュアップをやってみせた。その様子は、テレビ朝日「ワールドプロレスリング」でもダイジェストで放映され、ユーチューブでも公開されている。

タイガーは合同練習が終わった後、前田日明がクラッププッシュアップをしているのを見て「じゃあ5回叩きます」と宣言して、空中で5回手を叩いて見せた(写真)。触発された前田がトライするも4回どまり。

追い打ちをかけるようにタイガーは「私が100回叩いて見せます」と言って、空中で拍手をするように何回も手を叩きながら、そのまま立ち上がって叩き続けるという、ボケをかました。

前田は「立ったらできますよ」と笑いながら突っ込んだ。この時は普通に2人のやり取りを見ていたのだが、後から思い返してみると、タイガーが腕立ての状態から立ち上がった光景には驚きを禁じ得ない。これも身体能力の高さだろう。

この合宿は22日から始まり、3日目のこの日は、全員午前6時に起床して軽いランニングの後、地引き網に挑戦した。そして、午前10時からは土肥町総合会館に設置されたリングでトレーニング。

午後からは自由時間となり、タイガーは自室に閉じこもった。タイガーはパソコンに熱中していて、いち早く日本初のハンドヘルドコンピューターのエプソン「HC―20」を購入していて、この合宿にも持参していた。「自分で新しいプログラムを考えるのが楽しい」そう語っていた。

後に参加するユニバーサル(旧UWF)ではパソコンを使いルール作りをしていたのは、オールドファンには知られた話だろう。

さて、タイガーはこの年の8月11日の午前1時に東スポ編集局に電話をかけてきて「10日付で新日本プロレスとテレビ朝日に内容証明付き文書で契約解除を申し入れた」と伝えてくれ、新日本から退団することが明らかになった。

新日本退団までの戦歴は、タッグマッチも含めフォール負けはなし。シングルでの敗戦は1回のみで、82年7月23日に金沢でダイナマイト・キッドを、ショルダースルーで場外フェンスの外に跳ね飛ばし反則負けになったものだ。

身体能力の高さと、この戦績には今さらながら驚かされる(敬称略)。

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