五輪で高まるスケボー熱 練習場利用増え、用具の売れ行き好調

スケートボードを楽しむ子どもたち。東京五輪でのメダルラッシュで競技熱が高まっている=横浜市都筑区のJランプスタジオ

 東京五輪で競技として初採用されたスケートボードへの注目度が、県内で高まっている。日本勢のメダルラッシュを受け、横浜市内の練習場は若者を中心に利用が増加。ボードなどを扱うショップの売れ行きも好調だ。競技関係者は五輪がもたらした競技熱を裾野拡大の好機ととらえ、普及面で課題となっている専用パークの増設を働き掛けるなど、取り組みを強化している。

 五輪閉幕から間もない8月中旬、同市都筑区の室内スケートパーク「Jランプスタジオ」は開場とほぼ同時に利用客でいっぱいになった。滑走音を響かせて軽快なジャンプ技を披露する若者もいれば、親に支えられながらボードに足を掛け、恐る恐る滑り出す子どもの姿も。

 同市港北区の小学2年、山田歩君(8)は男子ストリートで金メダルに輝いた堀米雄斗選手(22)のパフォーマンスに魅了された。「格好いい。僕もやりたい」と父大祐さん(38)に告げた。スケボー競技の経験がある大祐さんは早速、同パークに歩君を誘い、「息子とできてうれしい」と笑顔を見せた。

 同パークによると、五輪を機に利用者が増え、堀米選手が金メダルを獲得した日には特に利用者が多かったという。

 スケボー施設として県内有数の規模を誇る「新横浜公園スケボー広場」(同市港北区)でも、毎週末に開催するスケボー教室への問い合わせが五輪を機に大幅に増加。8月中は全クラスで空きがない状態という。

 女子パークで金メダルに輝いた四十住さくら選手(19)に憧れて同広場を訪れたという小学4年の女児(9)=同市瀬谷区=は「いつか四十住選手のように高く飛べるようになりたい」と夢見る。同広場を管理する市スポーツ協会の担当者も「競技熱の高まりを感じる」とほくほく顔だ。

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 五輪効果はボードなどを扱うショップにも波及している。県内最大級の品ぞろえを誇る「ムラサキスポーツ横浜みなとみらい東急スクエア店」(同市西区)では、堀米選手が使うブランドのデッキ(板)の売り上げが五輪前に比べ約3倍に伸びた。生産が追いつかず、1カ月以上入荷待ち状態の商品もあるという。

 スタッフの宮城正海さん(32)は「買い求めるのは5歳の子どもから70代の高齢者まで幅広く、女性客も大幅に増えた。五輪を通じて『楽しくて格好いい』という競技の魅力が伝わったのではないか」と分析する。ただ、人気の定着に向け「県内には自由に滑走できるパークがまだまだ少ない」と課題を口にする。

 ストリート文化に根差すスケボーには騒音問題や衝突による事故への懸念が顕在化している。県警は禁止エリアでの滑走をしないよう注意喚起するとともに、悪質な事案については摘発を辞さない姿勢で臨んでいる。

 横浜市によると、市管理の専用パークは港北、青葉、緑、中区に1カ所ずつあり、戸塚区でも整備を予定している。宅地化が進み、適地の確保は容易でないといい、担当課は「課題を解消しながら整備を進めていければ」とする。

 NPO法人・横浜スケートボード協会の小島秀彌会長(49)は「公園で遊ぶような感覚で、スケボーに親しめる環境なしに若い才能は開花しない」との見方を示す。協会として市内全18区に1カ所ずつの整備を目標に署名活動を進めている。「五輪を機にスポーツとして広く認識された今、専用パークの増設などに行政とともに取り組みたい」と話す。

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