新型コロナに対する中和抗体の高速自動測定装置用キット、慶應義塾大学などが開発

慶應義塾大学医学部の村田満教授らの研究グループは、株式会社医学生物学研究所との共同研究により、新型コロナウイルスに対する感染防御能を反映した中和抗体を自動測定装置で迅速・多検体測定するキットの開発に成功した。

一般的にウイルスに感染すると、生体内で抗体と呼ばれる防御因子が作られる。抗体はウイルスのさまざまな部位を特異的に認識して結合するが、感染防御の能力は抗体によって異なる。これとは別に、ウイルスの活性に重要な部位(Spikeタンパク質)に結合してその機能を阻害し、ウイルスを不活化する能力を有する抗体は「中和抗体」と呼ばれ、この量が多いと感染防御能が高い。既存の中和抗体測定キットは手動のため処理能力に課題があり、ワクチン普及に伴う多検体の中和抗体測定の需要に応える必要があった。

今回、研究グループは発光基質を用いた「CLEIA法」により、中和抗体の量を発光量で自動測定できるキットを開発。中和抗体が存在すると発光量が少なくなることで、ウイルスの働きの阻害程度が数値化可能になった。キットは株式会社LSIメディエンス社製の国産自動臨床検査装置STACIA®に搭載可能で、1時間あたり最大270テストを実現し、サンプリングから19分以内で迅速に測定できる。この検査方法はウイルスを含まないため、通常の実験室で使用可能であり安全性が非常に高い。また、測定された検体中の中和抗体価は実際の新型コロナウイルスを用いた感染中和試験と高い相関を認めた。

開発したキットは少数検体から多数検体まで幅広く測定できる。個々の患者の中和抗体の評価、ワクチン後の抗体価の推移、最適なワクチン接種間隔を調べる研究等、幅広い有用性が考えられるとしている。

参考:

【慶應義塾大学】新型コロナウイルスに対する中和抗体を迅速に検査する自動測定装置用キットの開発に成功(PDF)

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