意地の逆襲。ニッサンGT-Rが表彰台独占でMOTULが鈴鹿3連勝を達成【第3戦GT500決勝レポート】

 第4戦もてぎより約1カ月遅れの変則開催となった鈴鹿サーキットでの2021年スーパーGT第3戦『FUJIMAKI GROUP SUZUKA GT 300km RACE』は、MOTUL AUTECH GT-Rのロニー・クインタレッリ/松田次生組が、終盤のニッサン陣営内バトルを制しての逆転劇で、昨季に続く“鈴鹿ハットトリック”を達成した。2位にCRAFTSPORTS MOTUL GT-R、3位にリアライズコーポレーション ADVAN GT-Rが続き、ニッサンGT-Rがポディウム独占で鈴鹿サーキット強者ぶりを見せつける結果となった。

 7月中旬開催で梅雨明けの灼熱勝負となった第4戦ツインリンクもてぎから一転、7月下旬より続く記録的長雨の影響を受け、8月21~22日の週末も雨がらみの展開が予想された。

 しかし前日予選は高い降雨確率ながらドライ路面でのアタック合戦が繰り広げられ、想定温度より低めのコンディションで64号車Modulo NSX-GTと16号車Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GTのダンロップタイヤ装着組がフロントロウを独占する速さを披露。

 2列目にはミシュランを履く前年度鈴鹿“W覇者”の23号車MOTUL AUTECH GT-Rに、久々の上位グリッド獲得でヨコハマタイヤの性能向上を証明した24号車リアライズコーポレーション ADVAN GT-Rと、ニッサン陣営の2台が並ぶ結果に。

 一方でトヨタ陣営のGRスープラ勢は前戦もてぎで優勝争いを繰り広げた19号車WedsSport ADVAN GR Supraの9番手を最上位に、燃料リストリクターのランクダウン領域に入るサクセスウエイト(SW)搭載車両が多いとはいえ、ブリヂストンタイヤを履く5台ともにQ1敗退を喫するなどまさかの展開となった。

 明けた日曜も予報に反し午前から晴れ間が覗いた三重県鈴鹿市上空は、ウォームアップ走行開始の午後13時10分時点でさらに日差しが照りつけるようになり、気温も28度まで上昇。このセッションでGT300クラスにトラブルでクラッシュした車両があった影響で、10分遅れの午後14時40分に2周のフォーメーションラップが開始された。

 この時点で不穏な雲が増え始めながらも気温31度、路面温度が43度と週末最高の温度環境でスタートが切られた52周のレースはクリーンな立ち上がりを見せると、序盤から先頭のダンロップ装着組のNSX-GTがスパート。先頭のModulo NSX-GT伊沢拓也は1分49秒台に入れながら、3番手のMOTUL AUTECH GT-Rロニー・クインタレッリ以下を引き離しに掛かる。

 後方では、6番手にいたAstemo NSX-GTが燃料リストリクター1ランクダウンの影響からか後続に飲み込まれる苦しい展開となり、7番グリッドスタートだったCRAFTSPORTS MOTUL GT-Rの千代勝正はARTA NSX-GTも仕留めて5番手に浮上していく。

 すると直後の4周目。首位のModulo NSX-GTがシケインのブレーキングで異変に襲われ、車体右サイドから黒煙を吐いたかと思った瞬間、そのまま直進するかたちでアウト側のスポンジバリアに激突。車両の前半分が埋まった状態のクルマからなんとか脱出した伊沢だが、このアクシデントでフルコースイエロー(FCY)が発動したのち、消火活動のためセーフティカーが出動する状況となる。

 9周目のホームストレートで2クラスの隊列が整えられたのち、手早くバリア修復を終えて12周目にリスタートが切られると、首位を引き継いだRed Bull MOTUL MUGEN NSX-GTの大湯都史樹は、MOTUL AUTECH GT-Rからポジションを守り、その背後には24号車リアライズコーポレーション、3号車CRAFTSPORTS MOTULと3台のGT-Rが追走する展開に。

 中段では37号車KeePer TOM’S GR SupraがSTANLEY NSX-GTと幾度もポジションを入れ替えるバトルを演じ、38号車ZENT CERUMO GR Supraも15周目のシケインで12号車カルソニック IMPUL GT-Rを捉えるなど、ブリヂストンタイヤ装着のGRスープラ勢がジリジリとポジションを回復してトップ10圏内を伺う勢いを見せる。

 ドライバー交代のミニマムとなる19周目には、ポジションを落としていた12号車を皮切りにピット作業が始まると、同一ラップでSTANLEY NSX-GT、続く周回でもARTA含む3台がピットロードへ。そして21周目には首位16号車Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GTもドライバー交代へと向かい、31秒ジャストの静止時間で笹原右京へとバトンを繋いでいく。

 しかし10周目時点で35度まで低下していた路面温度も影響したか、Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GTは同一周回で入っていたCRAFTSPORTS MOTUL GT-R平手晃平に先行されたばかりか、アウトラップで12号車カルソニック IMPULの平峰一貴にもパスされ、実質3番手にまでダウン。

 さらに数周遅れて25周目にピットへ向かった23号車MOTUL AUTECH GT-R松田次生も、31.6秒の静止時間ながら、コース復帰後にデグナーカーブ進入でわずかにアウト側へとはみ出した16号車の逆転に成功。これでGT-Rが1-2-3体制となる。

 26周目に最後まで引っ張った24号車リアライズコーポレーション ADVAN GT-Rが高星明誠に交代し、全車がルーティン作業を終えると、高星はその4周後にはペースダウンに見舞われていた16号車Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GTも仕留めて4番手へ。ニッサン陣営が1-2-3-4を固めて『鈴鹿完全制圧』の勢いをみせる。一方の16号車は翌周に1号車STANLEYのチャンピオン、山本尚貴にも先行を許す苦しい展開となってしまう。

 その後、GT-R陣営の3番手争いが激化し、35周目には12号車平峰の背後に迫った24号車高星が最終コーナーから並び掛けると、36周目のラップを通じてポジションを入れ替えるサイド・バイ・サイドの勝負を展開。そのままヘアピン立ち上がりで並んだ高星がスプーン進入で前に出て、表彰台圏内へと這い上がる。

 さらにレースも残り15周の38周目に入ったところで西コースを中心についに雨粒が落ち始めると、首位2台のGT-Rも急接近。40周目にその差を1.034秒とした2番手松田は、続く41周目のヘアピンで3号車平手のインサイドへ。教科書どおりのブレーキングで陣営内バトルを制し、昨年の覇者がついにトップランを奪っていく。

 その直前の39周目には同じヘアピンの進入でチャンピオンの1号車STANLEY NSX-GT山本がペースに苦しむ12号車カルソニック IMPUL GT-Rを捉え4番手へ。トップ5を守りたかった平峰だが、その後43周目の1コーナーでは36号車au TOM’S GR Supraにも先行されてしまう。

 一方で表彰台圏内を行く3台のGT-Rは波乱なく終盤をまとめ、MOTUL AUTECH GT-Rが52周を走破して今季初優勝を手にすると同時に、鈴鹿“3連勝”の偉業を達成。これまで劣勢だったニッサンGT-R陣営が意地を見せ、2位にCRAFTSPORTS MOTUL GT-R、3位にリアライズコーポレーション ADVAN GT-Rが続いてニッサンが表彰台を独占する快挙を成し遂げた。

 その背後には64kgのサクセスウエイトを積みながら19周目からのロングスティントで上位進出を果たした王者STANLEY NSX-GTが入り、選手権を考えてもランキング首位浮上を果たす大きな4位に。5位には36号車au TOM’S GR Supraが続き、ポイントスタンディングでも3位を手にする価値あるレースとなった。

2021スーパーGT第3戦鈴鹿 スタートの様子
2021スーパーGT第3戦鈴鹿 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ)
2021スーパーGT第3戦鈴鹿 CRAFTSPORTS MOTUL GT-R(平手晃平/千代勝正)
2021スーパーGT第3戦鈴鹿 リアライズコーポレーション ADVAN GT-R(高星明誠/佐々木大樹)
2021スーパーGT第3戦鈴鹿 STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐)

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