横浜市長選で菅義偉首相(衆院神奈川2区)が支援を明言した前国家公安委員長・小此木八郎氏が敗北したことに与党や官邸に「菅降ろしの風が吹きだす」(自民党幹部)と衝撃が広がった。
立憲民主党推薦で共産党などが応援した元横浜市立大教授・山中竹春氏に勝利を許したことで、秋までにある衆院選での野党共闘に勢いを与えた格好。首相や政権への大きなダメージとなるのは必至だ。
今回の選挙で地元の自民が小此木氏と現職の林文子氏の支持とに分裂した。首相はタウン紙「タウンニュース」の意見広告で小此木氏と対談し支持を表明。「国のトップとして異例のカミングアウト」(政府高官)に、同市長選の結果が一気に政局へと直結した。
肩入れを表明した理由を周囲に「旗幟(きし)鮮明にしておかないと支持を寄せられないから」と説明。「IR(カジノ付き総合リゾート施設)を巡り仲違いしたのではないか」との憶測を払拭(ふっしょく)する狙いを示唆していた。
実際には「関係が強調され過ぎた」(与党閣僚経験者)。小此木氏は公明の全面支援を受けられた一方で、菅首相への批判の逆風をもろに受け効果は相殺された。官邸関係者は「総裁選や衆院選と政治課題は続くが、乗り切るのは容易ではない」と声を落とした。