長崎IR事業者 CAIJ“逆転”で選定

長崎IRの誘致先となっているハウステンボス。県は「カジノオーストリアインターナショナルジャパン」にIRの設置・運営を任せる方針=佐世保市

 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致で、長崎県はIRの建設と運営を任せる事業者に、オーストリアの国営企業関連のグループ「カジノオーストリアインターナショナルジャパン」(CAIJ)を選定する方針を発表した。月内にも基本協定を締結して正式決定し、国が最大3カ所を認定するIR整備の実現を目指す。一方、落選したグループは選考過程が「不透明」と問題視し、審査のやり直しも求めている。
 佐世保市のハウステンボス(HTB)へのIR誘致を計画する県は10日、国内外の5グループが提出した計画を評価する審査委員会の採点結果を発表。最も高い評価を得たCAIJをパートナーとし、IR誘致を進める考えを示した。
 採点結果によると、1次審査(300点満点)では5グループのコンセプトや運営能力、財務能力を書類で選考。香港企業などでつくる「ニキ チャウフー(パークビュー)グループ」が182.9点、香港と米国の企業が中心の「オシドリ・コンソーシアム」が154点、CAIJが94.7点で通過した。
 2次審査(千点満点)ではより具体的な計画内容を確認。カジノ施設や危機管理体制などが優れたCAIJが697点でトップに躍り出た。オシドリは運営能力や財務安定力でリードしたが682.8点、ニキはMICE(コンベンション)拠点やギャンブル依存症対策が高得点だったが667.1点で及ばなかった。
 CAIJの計画について、県は「基本協定を締結するまで明かせない」とする。CAIJは欧州を中心に世界35カ国で215のカジノを設置した実績があり、関係者によると、CAIJの計画のイメージは、オランダの街並みを再現したHTBとの調和性が特に高かったという。

長崎IR事業者選定審査の採点結果

 選考では、地元の“意向”が反映されたという見解もある。佐世保市には米軍や自衛隊の基地があり、政財界は米国や防衛省との関係を重視する。識者ら8人でつくる審査委はグループの名前を伏せた形で計画を採点したが、「CAIJの計画は欧州色が強く見分けが付きやすい。安全保障上の問題を考慮し、中国系資本を避ける傾向もあったのではないか」との見方もささやかれる。
 一方、落選したグループからは選考過程が「不透明」と不満の声が出ている。
 2次審査では、計画を採点する前に、県は外部に委託し、反社会的勢力の関与などを確認する廉潔性調査を実施。オシドリとニキはともに「根拠のない調査結果を示され、県に辞退を迫られた」と主張する。ニキは調査が採点に影響した可能性もあるとみて、審査のやり直しを要望した。
 県IR推進課は「募集要項にのっとり公平公正に審査した」と強調。廉潔性調査に関しては「現時点ではコメントできない」としている。 


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