【札幌記念】完勝ソダシ競馬界の〝二刀流〟へ 秋華賞後にはダート路線も視野

着差以上の強さで札幌記念を制したソダシ

22日、札幌競馬場で行われた第57回GⅡ札幌記念(芝2000メートル)は2番人気のソダシ(牝3・須貝)が勝利。3角を過ぎたところで先頭に立ち、直線外から詰め寄った1番人気ラヴズオンリーユーの追撃を振り切って6つ目の白星を手にした。オークスで喫した苦い初黒星(8着)の記憶を払拭し、歴戦の古馬が揃ったレースでその実力を見せつけた。白毛のアイドルホースから次代を担うスターホースへ――。レースを検証しながら今後の展望を探っていく。

「大外枠を引いたのでゲートは出たなりで1角に入ろうと思っていた。折り合いがついて、いつでも動ける手応え。今日は前半のレースから前へ行っても止まらない馬場だったので自信を持って追い出した」

吉田隼は早めに先頭に立って押し切るという、イメージ通りの競馬での勝利にホッとした表情を浮かべた。この日の札幌は午前11時2分に最大瞬間風速20・8メートルを記録する強風が吹き荒れた。向正面が向かい風、直線は追い風という状況で午前中から先行馬が踏ん張れるコンディション。それを読み切った鞍上の好騎乗は見逃せない。

確かに3歳牝馬で斤量52キロ、前記の直線の追い風という後押しがあったのは事実だが、トーラスジェミニがつくった5ハロン通過59秒9の流れを2番手追走、外からブラストワンピースが早めにプレッシャーをかけてきた展開は決して楽なものではなかった。実際ゴールまでの4ハロンは11秒台のラップが連続したが、それを超ロングスパートをかけつつ踏みとどまったのだから着差(3/4馬身)以上に強さが際立つ内容だった。

「ジョッキーには自分で競馬をつくってほしいと指示していた。お客さんが入っていてもドッシリと歩けていたし、クロフネ産駒は芝2000メートル以上の重賞を勝てないというのをソダシが破ってくれた。これでまた新たな伝説をつくってくれた」と須貝調教師。クロフネ産駒の呪縛とされた距離の壁克服は大きな収穫だったと話す。

須貝師から今後に関しての言及はなかったが、この日の内容から同じ芝2000メートルの牝馬3冠最終戦・秋華賞(10月17日=阪神)へ向かうことになりそうだ。

「ズルいところが出てきてレースが終わって帰ってくる時も嫌がっていた。走りだすと素直だけど、今日も最後は苦しくなったのでそのあたりは考えつつ乗りたい」と吉田隼。この一族は母ブチコが突然のゲート難で引退を余儀なくされたように気性的な難しさを内包している。ソダシ自身も今回の最終追い切りで馬場へ入った後なかなか走りだそうとしなかった。気性面に関してはより慎重に調整を進めていくことになるが、そこは希代の名馬であり悍馬であったゴールドシップを育てた須貝師の経験が間違いなく生きてくるはずだ。

ソダシは芝で実績をあげているが、母ブチコはダート4勝、近親にダート・オープンのハヤヤッコがいて血統背景から砂適性の高さは疑いようがない。もともと須貝師はデビュー前から「ダートとの二刀流も考えている」と明かしていた。秋華賞後は二刀流へ転換、競馬界の大谷翔平となる可能性は十分。選択肢は様々ある。手頃なものでは牝馬限定の地方交流重賞、そうでなければ南部杯、JBCレディスクラシックなどの地方交流GⅠ。JRA・GⅠならチャンピオンズカップ、フェブラリーS、大物を狙うのならドバイワールドカップという具合だ。

すでに人気、知名度は全国区。さらに異世代対決を勝利したことで実力も証明したソダシが、列島行脚、さらに海外遠征となれば…日本のみならず世界からも注目を集めるのは必至。白い二刀流クイーンの動向から目が離せない。

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