【北九州記念】熊本産馬ヨカヨカが歴史的V その裏にあった男たちの熱いドラマ

熊本産馬として初のJRA重賞制覇を成し遂げたヨカヨカ

22日の小倉競馬場で行われたGⅢ北九州記念(芝1200メートル=サマースプリントシリーズ第4戦)は、5番人気のヨカヨカ(牝3・谷)が優勝。キャリア10戦目でうれしい初タイトルを獲得するとともに、熊本産馬として初のJRA重賞制覇という偉業を達成した。歴史に残るメモリアルVの裏にあったのは特別な思いを持った男たちの熱いドラマだ。

歓喜の涙が頬を伝った。「九州産馬で、この九州で、重賞を勝つことができた。感無量という言葉しかない」。九州産馬では05年テイエムチュラサン(GⅢアイビスSD)以来16年ぶり(平地)、熊本産馬では史上初となるJRA重賞制覇。歴史を刻んだヨカヨカの谷調教師は人目もはばからず男泣きした。

幸の気迫のステッキに応え、伸びてきた最後の直線。人数制限しているはずのスタンドから割れんばかりの拍手が巻き起こった。

「道中はずっとスムーズな走りをしてくれて、4コーナーを回ってくる時の手応えで“これなら”と思いました。直線ではお客さんの応援が耳に届きました。最後は無我夢中でしたね」。

幸もまた九州・鹿児島出身だ。51キロでの騎乗は約2年ぶり。今年1月に史上4人目となるJRA通算2万1000回騎乗を最速で達成するなど、乗り鞍の多さで知られるジョッキーが、この日わずか6鞍の騎乗。特別な思いを持ってレースに臨んでいた。「谷先生にも九州産馬にも昔からお世話になっていますし、師匠の谷八郎先生も九州産馬をたくさん管理していた。その縁もあったので余計にうれしいです」

谷調教師の父、谷八郎元調教師は昨年死去していた。「ちょうど先週が一周忌だったので、親父も後押ししてくれたんだと思う」。谷師もまた特別な思いでこの一戦に懸けていた。

気になる次走については「ここが全力投球だったので、今後については様子を見てから。最終的にはスプリンターズS(10月3日=中山)になるかな」とトレーナー。以前はスプリンターズSにつながらないと言われた当レースだが、近2年は19年モズスーパーフレア(4→2着)、20年アウィルアウェイ(3→3着)と奮闘中。地元・九州で最高の輝きを放ったヨカヨカが、最高峰の舞台でも大仕事を…。そんな期待を持たずにはいられない今年の北九州記念だった。

© 株式会社東京スポーツ新聞社