<金口木舌>残り51秒

 安全と危険、歓喜と悲哀。対義語である二語の落差は大きい。勝利と敗北もそうであろう。戦いを終えた勝者と敗者の差は歴然としている。それが1点差であっても

▼全国高校総体女子ハンドボールで那覇西が準優勝した。1点差で優勝を逃しはしたが、見事な準優勝とあえて書きたい。決勝は互角の戦いだった

▼勝負の行方は常に行きつ戻りつした。特に後半残り51秒からの攻防は印象的だ。ボールは1点リードの名経大市邨(愛知)が保持。那覇西はそこから奪い返す。同点ゴールを押し込んだのが残り15秒だった

▼好ゲームの成立はそれだけの相手がいてこそ。先の残り51秒の場面。リードする名経大市邨に時間稼ぎをするような動きはなかった。土壇場で並ばれた。誰もが延長戦を思ったはずだ

▼スコアは動いた。再開後、市邨の選手が放ったロングシュートがネットを揺らした。残り2秒。強気を貫いた豪快な決勝ゴールだった。那覇西の粘りも見事で、勝負のあやは細部に宿ると思わせる優勝戦だった

▼海邦国体優勝時の少年男女のメンバーらが指導者として県勢女子初の総体制覇を目指す。総体後、海邦国体少年女子主将の小橋川聖子さん(51)と話す機会があった。競技からは離れたが那覇西の結果もチェックしていた。「今回の経験も糧に、いつか優勝を果たしてくれる」と後輩らをそっと応援し続けている。

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