【夏の甲子園】監督の〝三くだり半発言〟から這い上がり大金星を挙げた近江3年生の結束

近江は途中出場の山口の2点適時打で勝ち越した

【ズームアップ甲子園】第103回全国高校野球選手権大会第10日(甲子園)は23日に2回戦1試合が行われ、近江(滋賀)が大阪桐蔭(大阪)に6―4で逆転勝ち。3年ぶりに2回戦突破を果たした。

今夏で6回目の優勝を狙う強豪相手に2回までに0―4。それでもスクイズから一発まで大技小技で1点ずつ返し、7回に同点に追いついた。8回には二死満塁から途中出場の山口(3年)が2点適時打を右翼線へ放って、試合を決めた。

ヒーローの山口は「打った瞬間、信じられなくて鳥肌が立った。最後は3年のみんなが満塁を作ってくれたので、後悔なく全力で振ろうと思った」。その3年生メンバーたちは自らを含め、今春まで奈落の底へと突き落とされていた。

昨夏まで近江は県内公式戦30連勝をマークしながらも、新チームがバトンを受け継ぐと途端に敗戦を繰り返した。昨秋県大会の決勝はサヨナラ負け。さらに近畿大会出場をかけた今春の滋賀大会でも立命館守山に終盤で逆転され、屈辱の3回戦敗退で辛酸をなめた。このタイミングで「史上最大級」ともささやかれる〝三くだり半発言〟をあえて口にしたのが、多賀章仁監督(62)だった。

指揮官は「『もうお前たちでは勝てない』と。結局春も秋と変わらず、まったくモロいゲームをしてしまった。3年生には『これでユニホーム脱いでくれ』というぐらいは言った」と振り返る。「春山というキャプテンが非常に人間的にできた子。そういうキャプテンがいたからこそ、私は3年生に言えた。もう『どん底やから、ここから這い上がるしかない』と。『もしやるんやったら、その気持ちで這い上がって来い』と。彼がそういう中で本当に3年生を引っ張ってくれた。それが今夏、そして今日の試合にもつながったと思う」と続けた。

チームは多賀監督からの〝三くだり半発言〟を機に主将・春山(3年)を中心に再団結。地道な練習を必死に積み重ねた。今夏の県大会決勝で立命館守山に春のリベンジを成し遂げて甲子園行きの切符をつかむと、この日は聖地で近畿大会王者・大阪桐蔭をも飲み込む〝大金星〟を挙げた。「試合前には皆に『失うものは何もない。攻めて攻めて攻めまくるぞ』と伝えた。それが発揮できてうれしい」とは春山の弁だ。

多賀監督は「大阪桐蔭に勝てたことは大きな自信。次の試合もチャレンジ精神で食らいつく」ともコメント。この勢いのまま春夏通じ滋賀県勢初の全国制覇を目指す。

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