櫻井よしこ、西岡力ら日本の右派と韓国の諜報機関が癒着と韓国メディアが報道! 櫻井は否定も両者をつなぐキーマンの存在

国家基本問題研究所HPより

櫻井よしこと韓国・情報機関との癒着疑惑が一部で話題になっている。櫻井といえば、極右の女神として、嫌韓を煽る言論をおこなってきた一人。ところが、8月10日、韓国のテレビ局MBCの報道番組『PD手帳』で、韓国の情報機関である国家情報院(以下、国情院)の元職員が、国情院と櫻井よしこが理事長を務める極右シンクタンク「国家基本問題研究所」(以下、国基研)との癒着を告発したのだ。

国情院の元職員は、元慰安婦女性や元慰安婦支援団体が来日する際、国情院がその情報を日本の公安を通じて日本の極右ヘイト団体に流していたこと、日本の別の右派団体が韓国を訪れた際には、直接、接待したり、庁舎でブリーフィングするなど支援してきたことを明かした。

そして、この接待や庁舎でのブリーフィングの相手として、櫻井よしこが理事長を務める「国家基本問題研究所」の名前を挙げたのだ。

番組では、櫻井よしこや国基研が大きな影響力を持つに至った背景に、韓国・国家情報院が、国基研の評議員を務める西岡力(「拉致被害者を救う会」会長)などを通じて北朝鮮に関する情報を提供してきたことにある、と指摘。

しかも、元職員は、国情院から国基研に対して資金提供がおこなわれていたことも証言した。

これが事実なら、ふだん、何かにつけてリベラルメディアや野党を「韓国のスパイ」「中国のスパイ」呼ばわりしている櫻井よしこ氏らこそ、海外の諜報機関とつながり、利用されていたことになる。

一体どう申し開きするのか注目されていたが、しがし、桜井氏は13日にこの報道を「国基研は国情院を含むいかなる外国政府機関から支援を受けたことはありません」と否定、「韓国の公共放送であるMBCの一連の報道は名誉毀損行為であり許されません」などと猛抗議した。

たしかに、資金提供や接待については一方的な証言であるため、事実とは断定できない。

だが、櫻井氏ら国基研が、韓国の諜報機関である国情院の人脈とつながりがあるのは間違いなさそうだ。

●櫻井よしことともに文在寅攻撃を繰り返す、元駐日韓国大使館公使

その一端がかいま見えるのが、桜井氏が2018年に出版した『韓国壊乱 文在寅政権に何が起きているか』(PHP新書)という嫌韓本だ。同書は元駐日韓国大使館公使の洪熒(ホン・ヒョン)氏という人物との共著だが、洪熒氏は桜井氏の国基研の客員研究員で、櫻井氏のネット番組にも頻繁に出演したり、櫻井氏が執筆する記事にもコメントを寄せたりしている。

ところが、『PD手帳』によると、この洪熒氏は前身のKCIA時代から韓国の諜報機関・国情院の出身で、日本での活動資金も国情院が提供し続けてきたのだという。国情院担当記者や元国情院幹部が洪熒氏の経歴について証言、さらに告発者である元職員も洪熒氏について、退職した国情院の先輩に国情院が資金を提供していた旨を証言しているのだ。

番組では、洪熒氏と元国情院院長の李丙琪(イ・ビョンギ)氏の密接な関係を指摘していたが、このイ・ビョンギ元院長は朴槿恵前大統領の側近で、安倍前首相と朴前大統領がカネで慰安婦問題を封じ込めようと強行した2015年の「日韓慰安婦合意」の秘密交渉の仕掛け人だったことが、文在寅政権の検証により明らかになっている(ちなみに、この「日韓慰安婦合意」は日本の右派からも評判が悪く、安倍政権を批判する声が上がったが、『PD手帳』はそんななかで、櫻井氏は「外交的に大きな成果」と強く支持していたことを指摘していた)。

洪熒氏がKCIA、国情院の所属だったという明確な証拠はないが(ちなみに『PD手帳』は洪熒氏と櫻井氏に直撃したが、両人は取材を拒否)、洪熒氏の経歴を見ると、韓国陸軍士官学校を卒業し、軍、国防部に所属した後、外務部へ転職、駐日韓国大使館で参事官と公使を務めている。

韓国陸軍といえば、軍事独裁をしいた韓国右派の源流・朴正煕大統領の出身母体だ。

また、洪熒氏の日本での言論活動を見ていると、国情院のPRのような主張も展開している。

●過去の右派政権とつながってきた国家情報院が文在寅大統領ツブシのために日本の右派を利用?

しかし、韓国の諜報機関である国情院が櫻井氏ら日本の右派に接近しているとしたら、目的は何なのか。

以前はもっぱら北朝鮮脅威論の喧伝だったが、最近はもっと大きな目的が加わっていると見られる。

それはずばり、日本における文在寅政権叩きの扇動だろう。実際、櫻井氏のネット番組などで、前出の洪熒氏は、徹底的に文在寅政権批判を展開。「文在寅は朝鮮労働党のスパイ」「中国共産党のスパイ」などというフェイクニュースまで流している。

国情院はもともと軍事政権下で反体制派を弾圧してきたKCIAの流れをくんでおり、その後も右派政権とべったりの関係を築いてきた。とくに、朴槿恵前大統領の時代はその力を増大させ、民主化運動や反対派の監視・弾圧に動いてきた。

ところが、検察改革とともに国情院改革も公約に掲げた文在寅政権は、2018年に全面的に法改正し、政治的独立性と透明性の強化をはかるなど、国情院改革を進め始めた。

昔ながらの国情院主流派はもともと右派政党寄りのうえ、自分たちの力を削ごうとする文政権はどうしてもつぶしたい存在なのだ。

実際、洪熒氏は、文在寅政権が発足してからは、その国情院改革を「無力化」「保守派の粛清」などと徹底的に攻撃し続けている。

そして、櫻井氏もこれに呼応するように、国情院の新体制を批判している。
文在寅大統領は国情院改革のために、民主派の金大中元大統領の側近だった朴智正氏を情報院院長に就任させたが、朴智正情報院長が2020年12月に来日、菅首相や二階幹事長と会談すると、櫻井氏は週刊誌の連載で、この洪熒氏からコメントをもらって、朴情報院長があたかも北朝鮮の金正恩国家主席に操られているかのような推測記事を書いていた。

●日本と韓国の右派の癒着の背景に、安倍晋三の祖父と朴槿恵の父親の「親友関係」

いずれにしても、韓国の諜報機関「国家情報院」もしくはその周辺にいる右派と櫻井氏ら「国家基本問題研究所」がなんらかのかたちでつながっている可能性は高い。

韓国の国家情報院や右派は文在寅政権攻撃を煽るため、櫻井氏らは嫌韓を煽り、日本の慰安婦や徴用工問題をなきものするため、お互いを利用してきたのではないか。

こうした関係の背景には、歴史的な経緯もある。戦後、日本による植民地支配から解放されて以降は、ずっと反日姿勢が強いと考えられがちな韓国だが、政治の水面下においては、長らく日本の右派との協調的関係を築いてきた。とくに、朴正煕元大統領が軍事クーデターで実権を握って以降は、韓国軍事政権と日本の自民党政権の間でお互いの利権を共有する“蜜月関係”を築いてきた。

とくに、「安倍晋三の祖父」である岸信介と「朴槿恵の父」である朴正煕の「親友」関係は有名で両者の間ではさまざまな利権や不正の疑惑がささやかれてきた。

それから60年がたって、安倍晋三を支持する日本の極右・歴史修正主義勢力と、朴槿恵前大統領の時代に権勢を振るっていた勢力の連携が再び顕在化し始めたというのは偶然ではないだろう。

●『反日種族主義』出版も日韓右派の連携、元・駐韓大使の武藤正敏氏も朴槿恵グループと…

実際、日本の極右と韓国の右派勢力・旧政権グループがつながっているケースはこれだけではない。

『PD手帳』では、西岡氏の歴史修正主義本『でっちあげの徴用工問題』の韓国語版翻訳者ら2人を国基研が表彰、菅首相や萩生田文科相が祝辞を寄せていたことは番組でも紹介されていたが、1人は韓国で出版された日本擁護の歴史修正主義本『反日種族主義』の著者の1人でもある。この『反日種族主義』も日韓右派の連携によって生まれた(https://lite-ra.com/2019/11/post-5103.html)。

また、テレビが日韓問題を扱う際、韓国通のコメンテーターとしてしょっちゅう登場する元・駐韓大使の武藤正敏氏も、韓国の朴槿恵前大統領の周辺とつながっているといわれるひとりだ。

今回の『PD手帳』の報道は、ある意味、日韓右派のこうした構造的癒着に光を当てたものといっていいだろう。

しかし、残念ながら、この問題が話題になったのはネットの一部だけ。マスコミは一切触れていないし、逆に、嫌韓や文在寅攻撃の報道ばかりがあふれている。

だが、日本のメディアがしたり顔で解説している文在寅政権攻撃には、韓国の民主化運動を弾圧した朴正煕軍事政権を源流とする右派勢力発の恣意的な情報が数多く含まれていることを忘れてはならない。日本の嫌韓報道は、日本国民の韓国への差別感情と敵対感情を煽っているだけではない。韓国の民主主義を後退させる行為にも加担しているのである。
(編集部)

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