アウディのマグナスが初優勝。リンク&コーのウルティアも今季初勝利で選手権首位に肉薄/WTCR第4戦

 7月31~8月1日の開催を予定していたイタリアでの第4戦アドリア・レースウェイが延期されたことにより、新たな第4戦として実施されたWTCR世界ツーリングカー・カップのハンガロリンク戦は、ベルギー期待の星ジル・マグナス(アウディRS3 LMS/コムトゥユー・チーム・アウディスポーツ)がレース1で待望の世界戦初勝利をマーク。

 続くレース2もウルグアイの若手有望株であるサンティアゴ・ウルティア(リンク&コー03 TCR/シアン・パフォーマンス・リンク&コー)が今季初優勝を飾り、選手権首位の王者ヤン・エルラシェール(リンク&コー03 TCR/シアン・レーシング・リンク&コー)に2点差と迫るなど、それぞれ21歳と24歳の若い力が躍動する週末となった。

 モーターランド・アラゴンで争われた第3戦と同様に、直前のBoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)改訂により勢力図の変動が予想された8月21~22日の週末は、予選から“最軽量車”のクプラが速さを見せる展開に。

 こちらも10kgのBoP重量削減措置を受けたリンク&コー03 TCRのウルティアを退け、今季鳴り物入りでゼングー・モータースポーツ入りを果たしたロブ・ハフ(クプラ・レオン・コンペティションTCR/ゼングー・モータースポーツ・サービスKFT)が今季初ポールポジションを獲得。ここまで苦心が続いた前半戦を踏まえて「まずチームに大きなお祝いを申し上げたい」と、感謝の言葉を贈った。

「彼らはホームレースでこのポジションに立つため、一生懸命働いてきた。今年は本当に苦労続きだったし、うまくいっていないことは誰の目にも明らかだった。それだからこそ、予選を通じてラップタイムをマネージし、地元最速というチームの夢を実現できたことを誇りに思っている」と、2012年のツーリングカー世界王者でもあるハフ。

 その予選トップ10のリバースグリッド採用となるレース1は、10kgのコンペンセーション・ウエイトが課されたことで、ともに9番手、10番手となっていた第2世代アウディRS3 LMSのマグナスとフレデリック・バービッシュ(アウディRS3 LMS/コムトゥユー・チーム・アウディスポーツ)がフロントロウからのスタートを切った。

 するとこのオープニングラップからアクション満載の展開がアウディを助け、バービッシュに襲い掛かったイバン・ミューラー(リンク&コー03 TCR/シアン・レーシング・リンク&コー)は、もう1台のクプラをドライブするミケル・アズコナ(クプラ・レオン・コンペティションTCR/ゼングー・モータースポーツ・サービスKFT)と絡んでスピンオフ。

R1でバービッシュに襲い掛かったイバン・ミューラー(Lynk&Co 03 TCR/Cyan Racing Lynk&Co)は、もう1台のクプラをドライブするミケル・アズコナ(Cupra León Competición TCR/Zengő Motorsport Services KFT)と絡んでスピンオフを喫する
「何度も2位を味わい、僕らは長い間これに値する努力を続けてきた。今は本当にとても幸せだ」とR1勝者のジル・マグナス
予選最速のロブ・ハフ(Cupra León Competición TCR/Zengő Motorsport Services KFT)だったが、R2ではその優位性を逃す展開に

■レース2はスタートのアクシデントを回避したウルティアが制す

 さらに7周目には7番手まで浮上していた元世界王者ハフが、シケインのタイヤスタックにマシンをヒットさせ左フロントサスペンションを破損。このアクシデントによりセーフティカー(SC)が導入される。

 バリア修復に5周を要し、レースは14周まで延長されたものの、SC明けのリスタート後もリードを維持したマグナスは、接触審議中のアズコナ、現役王者のエルラシェールを抑え切ってのトップチェッカー。念願のシリーズ初優勝を手にした。

「リバースポールからスタートできると考えたとき、ここはダウンフォースが必要なトラックで集団内にいるよりはアドバンテージがありそうだと考えていたんだ」と、重いアウディを巧みに操った勝者マグナス。

「1コーナーまでは長く、加速勝負だけが心配なポイントだったが、背後にフレッド(・バービッシュ)がいてくれたことが幸運だった。彼は僕を守ってくれたし、心から感謝したい。最高のチームワークだと思っているよ」

 続いて現地午後15時過ぎからスタートが切られたレース2は、ポールシッターであるハフのサスペンション修復が間に合わずピットスタートに。この結果、実質最前列を得たウルティアが、ネストール・ジロラミ(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/ALL-INKL.DE・ミュニッヒ・モータースポーツ)や、地元の英雄ノルベルト・ミケリス(ヒュンダイ・エラントラN TCR/BRCヒュンダイN・ルクオイル・スクアドラ・コルセ)とバービッシュらが絡んだスタートでの“マルチヒット”に巻き込まれることなく快走。

 ウルティアはジロラミ、バービッシュを従え今季初勝利を飾り、レース後にタイム加算ペナルティにより5位に後退したジロラミに代わり、アズコナが3位ポディウムを確保する結果となった。

 このイベント直前にシーズン後半戦カレンダーの改訂が発表されたWTCRは、アジア・ラウンドのキャンセルによりチェコ共和国のモスト、フランスでEVツーリングカー選手権『PURE ETCR(ピュアETCR)』との併催を予定するポー-アルノー、そしてロシア・ソチ戦の追加をアナウンス。そのアウトドローモ・モストでの第5戦は10月9~10日の週末が予定されている。

R2でネストール・ジロラミに弾かれ選手権首位陥落のジャン-カール・ベルネイは「この週末が終わってくれてうれしい」
最重量級のFK8シビックでFP1最速を記録するなど奮闘したジロラミだったが、無理が祟る格好となった
R2勝者のサンティアゴ・ウルティアは「アラゴンでミスしていただけに、この勝利は格別」

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