<南風>お盆と先祖供養

 ある会社の「コロナ自粛による生活者意識の変化」に関する調査で、ゆかりの深い故人への祈りや願いなど心の中で語りかける機会が増え、ソーシャルディスタンスを埋め合わすかのように心の距離が緊密化しているとみる結果が出た。また、別の会社の県民調査でも、若年層ほど仏壇行事を残すべきと考えていることが分かった。

 故人が仏壇の中にいるかのように毎日会話ができて、自分が見守られていると感じることで、心のよりどころ・安らぎのひと時となる方も多いのではないだろうか。沖縄には祖先を守護神としてあがめる「祖先崇拝」が残っていて、非常に先祖を大切にしていると感じる。しかし、お盆にはご先祖様が現世に戻ってくるという本当の意味を知らず、親戚が集まってごちそうを食べる感覚の若者もいるとよく耳にする。初七日・四十九日も同様だ。

 沖縄の法事は女性が頑張って切り盛りしており負担に感じる割合も高く、最近は葬祭会館で法事利用する人も多い。接客負担の軽減、駐車場の確保、空調などを考えると会館のメリットが大きいからだ。また、コロナ禍においては、会館の方がスペースを広く使えて、換気などの感染防止に対する安心の声も多く聞かれる。

 仏教の教えに「心は形を求め、形は心をすすめる」という言葉がある。ころころと定まることがないので「こころ」と言うそうだが、心を整えたくても心そのものは形を持たない。しかし、所作や行動といった目に見えるものの形を整えることで、心も整えることができるという意味で、形とは日本の儀礼文化そのものだ。

 コロナ禍による孤独感や不安、人との交流の減少などによる反動から、故人に対する想(おも)いは強くなっており、冠婚葬祭業に携わる立場として先祖供養に関する儀式の意味や価値を伝えていきたい。

(佐久間康弘、株式会社サンレー代表取締役社長)

© 株式会社琉球新報社