アルピーヌ、LMH/LMDh関与を年末までに決定へ。WECにはLMP1の延長使用を要請か

 2021年のWEC世界耐久選手権に導入されたハイパーカークラスに、特認車両のノンハイブリッドLMP1カー『アルピーヌA480(旧レベリオンR13)・ギブソン』で参戦しているアルピーヌは、ル・マン・ハイパーカー(LMH)又はLMDhで耐久レースを継続するために「さまざまな方法を検討」しており、プロトタイプレース・プログラムを開始するかどうかを年内に決定する予定だ。

 アルピーヌのローラン・ロッシCEOは、旧規定のLMP1マシンで行っている現在のエントリーを超え、トップレベルのプロトタイプレースに参加することを望んでいる、とル・マンで記者団に語った。

 彼は、現時点でアルピーヌはLMHやLMDhプログラムを発表する立場にはないが、将来に向け、どのように新車を開発するかを検討することに熱心であると説明した。

「これは私たちが非常に前向きな目で見ているものだが、すべてのパラメーターを評価するのにもう少し時間が必要なため、まだ決定は下していない」とロッシCEO。

「基本的には経済的な方程式であり、私たちが耐久レースを続けていくためにはどうすればいいのか、勝つチャンスはあるのか、ということを考えている。ただそこに存在するだけではない」

「年内には結論が出ることを期待すべきだ」

 ロッシは、LMHまたはLMDhに参入するために予定されたタイムラインは「決定プロセスの一部」であり、ルノー・グループの高性能カーブランドが2023年のレースデビューに向けて準備を整えるのは“挑戦”になることを認めた。

「我々はル・マンの100周年にあたる2023年にぜひ、その場に居たいと思っている」と彼は述べた。

「しかし、チームを構築し適切なテクノロジーを取り入れて、本当の意味でのアルピーヌにするにはどれだけの時間が掛かるかという現実にも直面している」

「それは2023年から2024年の間になるかもしれない。私たちは今から年末までの間に意見をまとめ、スポーツカーレースを継続するかどうか、どのカテゴリーで、どのようなタイムラインで行うかを決定する」

アルピーヌA480は、2020年にレベリオン・レーシングが使用していたオレカ製LMP1マシンだ
アルピーヌA110によるパレード 2021年WEC第4戦ル・マン24時間

■LMP1カーの特例参戦延長を提案か

 アルピーヌは2023年以降に計画されているLMHまたはLMDhプロジェクトに向けた“移行の年”として2022年シーズンを利用するために、自社のLMP1カーがWECでもう1シーズン走れるようになることを望んでいる。

“グランドファーザー・カー”とも呼ばれる旧規定のアルピーヌA480・ギブソンは現在、WECの特例処置に基づいて2021年シーズンに限りハイパーカークラスへの出場が認められている。このレギュレーションの延長がFIAとACOフランス西部自動車クラブに認められるかどうかは不透明だ。

 ロッシは2022年には新車を準備することができないため、ブランドにとっては「少し複雑」であることを認めた。

「これは我々だけの問題ではない」という同氏は、「各大会のオーガナイザーとの話し合いも必要だ」と続けた。

「明らかに、これは重要な決定事項だ。LMH/LMDh時代に今からどのように移行していくかは重要なポイントであり、私たちの要求はここにある」

「どちらのカテゴリーを選ぶにせよ2022年には間に合わない。その翌年以降でなければならないだろう。それは現時点で我々の意思決定プロセスの基準でもあるんだ」

「パートナーシップとの関係をどのように継続し、現在のチームと次の時代を築いていくかを見極めなければならない」

「私たちは主催者やFIA/ACOとともに協力して移行期間を確保し、できればLMP1を引き続き使用する可能性を考える必要がある」

 ACOのピエール・フィヨン会長は、Sportscar365からWECがLMP1カーの延長使用を認める用意があるかどうかを尋ねられると、「答えを待つ必要ある」と述べた。

 また、アルピーヌ・エルフ・マットミュートチームを運営するシグナテックのチーム代表であるフィリップ・シノーは、WECが延長を許可しない場合、彼のチームはLMP2プログラムへの復帰を余儀なくされる可能性を示唆した。

「たしかに、来年は移行の年になるだろう。アルピーヌとの間に何かが起これば、それは妥協案になる」とシノーはSportscar365に語った。

「ドライバーを引き止めるために1年だけLMP2に戻るかもしれないが、正確なことは分からない。決定はアルピーヌが下すのではない。それはACOとFIAが決めることだ」

■シグナテックはトップクラスで共闘する「良きパートナー」

 アルピーヌのロッシCEOはシグナテックチームを称賛し、フランスのブランドがトップクラスでの長期的なプログラムにコミットすることを決めた場合、チームとの関係を継続することを示唆している。

 アルピーヌ・エルフ・マットミュートは、8月21~22日に行われたル・マン24時間レースで、プジョー以来、フランス勢として初めて総合表彰台に上った。

「シグナテックは、アルピーヌとタッグを組む以前からこの分野で旗を掲げていた。私たちは、彼らを大いに評価しなければならない」とロッシは言う。

「彼らは自分たちがしていることのエキスパートだ。LMP2でル・マンを3回制し、そのカテゴリーで3度のシリーズチャンピオンに輝いた。彼らは非常に経験豊富なパートナーなんだ」

「だから、もし私たちが(トップクラスのプロトタイプレースを)続けるなら、そのような良いパートナーと別れる理由はない。率直に言って、いま私が強く考えている未来があるとしたら、それはシグナテックと一緒でなければならないだろうと思っているんだ」

2021年にトップカテゴリーにやってきたアルピーヌ。ル・マンでは特例参加が認められたLMP1カーで総合3位に入った。
ル・マン24時間の決勝スタート前には、アルピーヌF1カラーに彩られたルノーR.S.20に乗り込んだフェルナンド・アロンソがデモランを行った
スタート前のセレモニーで集合したアルピーヌモデルたち。左からA110 GT4、A470・ギブソン、アルピーヌF1カラーのルノーR.S.20、A110ロードカー

© 株式会社三栄