韓国紙「嫌韓は日韓マスコミのキャッチボールで生成」「嫌悪が日韓関係を支配してる」

韓国紙が日本で社会現象となった「嫌韓」の背景には、日韓マスメディアによる無責任なキャッチボールがあると指摘している。

韓国日報は18日、メディア人類学者であるキム・キョンファ氏の寄稿文「嫌韓は韓日メディアの《キャッチボール》が育てた」を掲載し。キム氏は、「韓日両国のメディアが出す互いの情報はとても危うく、両国に存在するさまざまな意見や視点のスペクトルをバランスよく伝達する努力は微々たるもので、お互いに対する否定的な感情を刺激する扇情的な視点と極端事例に専念するように見える」と指摘した。

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キム氏は、「今、日本社会で嫌韓は明らか社会現象である」としつつ、「だからといって、日本社会で嫌韓が蔓延という意味ではない」とし、ヘイトスピーチを糾弾する運動を行う市民や、政府の歴史修正主義を積極的に批判する勢力の存在、韓国料理やK-POP、ドラマ、ウェブ漫画などの韓国文化が人気である点にも触れ、「嫌韓が日本社会の政治的なキーワードという点は事実だが、様々な分野で韓国社会の親しみが大きくなっていることも明らかである」と言及した。

キム氏は、伊藤昌亮(2019) 『ネット右派の歴史社会学: アンダーグラウンド平成史1990-2000年代』(青弓社)を紐解き、嫌韓という言葉が現れたのは1992年であり、このとき韓国で放映された歴史ドラマで天皇が狙撃されるシーンがあったことから、日本の右翼勢力が韓国領事館に乱入。これに韓国メディアが「日本に嫌韓雰囲気がある」と報じたところ、日本の新聞が一斉にこれを引用し、嫌韓という言葉が定着した。しかし、当時は今のような嫌韓ではなく、むしろ韓国に対する無知が目立った時代であるとキム氏は指摘。実際に日本社会で韓国に対する反感が目立ち始めたのはその10年後であると述べた。

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しかし今や嫌韓意識は着実に育ち、公然とこれを発言するTV番組や、これを利用する政治家の存在などにも言及。

キム氏は、米国のジャーナリストであるウォルター・リップマン『世論』(1922)を引用し、「私たちが認識している外の世界が、実はマスメディアが伝える情報に依存し再構成された《類似の環境》(pseudo-environment)である」という点に触れ、私たちが認知する外の世界が現状のままではなくメディアというレンズを通過しながら一次的に「加工」された結果であると指摘した。

メディアが配信する情報は、それ自体が世界を構成する力になるが、「韓国のメディアが描写する日本は極右思想と排外主義に染まった嫌悪の社会だ」とし、「一方、日本のメディアは韓国社会の《反日感情》を不必要に浮上させ、人々の感情を刺激する」と批判した。

キム氏は、「言語には奇妙な力がある」とし、「私たちは言語が現象を記述するための手段だと思い込みがちだが、一度言語で形象化された現象が逆に私たちの考えを支配することも日常茶飯事だ」と指摘。「嫌悪という言語が長い日韓関係を支配してきた。今、これを代替する言語の糸口を心配する必要があるのではないか?」と問いかけている。

この報道をみた韓国のネットユーザーからは、

「お互いに関心が低く無知だから、誤解が誤解を呼びながらこうなったのだろう…」

「日本の嫌韓は韓国にも責任があると巧妙に希釈しようとする意図が見え見えだ…」

「我々も嫌日をするのに相手側に何を期待するのか?このような雰囲気は政府の不手際」

「とりあえず独島のせいだ。独島だけでも我々のものと認めたら俺は親日になる」

「自分は日本で右翼が何をしようが神経を使わない…」

などのコメントがネット掲示板に投稿されている。

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