ETCR第4戦はクプラのアズコナが、全ヒート勝利の完全制覇で2度目の“King of the Weekend”に

 WTCR世界ツーリングカー・カップとの併催で争われた電動ツーリングカー選手権、PURE ETCR(ピュアETCR)第4戦ハンガロリンクは、地元チームであるゼングー・モータースポーツXクプラのミケル・アズコナ(セアト・クプラ e-Racer)が、3台で争う初日のバトルから1対1のデュエル、そして日曜のタイムアタックを経てスーパーファイナルの全ヒートを制する週末完全制覇を達成し、フルマークの77点を稼いで自身2度目の“King of the Weekend”を獲得した。

 戦前にはハンガリーの国民的祝日である聖ステファノの日を祝った地元トップチームは、併催のWTCRでもロブ・ハフ(クプラ・レオン・コンペティションTCR/ゼングー・モータースポーツ・サービスKFT)がポールポジションを獲得するなど、勢いに乗る状態で4回目のETCRレースウイークを迎えた。

 このETCRでは、各陣営2台のマシンを組み分けされた4名のドライバーでシェアし、A、Bの各プールから3台ずつのバトルであるラウンド1、直接対決のラウンド2、そして1台でのタイムアタックを経て、日曜6台で争うスーパーファイナルに進出する、完全組み分け制のフォーマットを採用する。

 そのうちプールBに振り分けられたアズコナは、ラウンド1のバトルでジャン-カール・ベルネイ(ヒュンダイ・ヴェロスターN ETCR/ヒュンダイ・モータースポーツN)とルカ・フィリピ(アルファロメオ・ジュリアETCR/ロメオ・フェラーリ・M1RA)を危なげなく撃破して午後のデュエルへ。

 最大500kW(約680PS)を発生する後輪駆動電動マシンのパフォーマンスは常時300kW(約408PS)設定に抑えられているものの、その500kWを最長40秒間の“ブースト”として利用可能な規定を活用し、アズコナはオープニングラップから1コーナーまでのスタート勝負でそのエクストラパワーを利用。

 バトル2でもブラジルの新鋭ロドリゴ・バプティスタ(アルファロメオ・ジュリアETCR/ロメオ・フェラーリ・M1RA)を退け、中間リザルトで獲得可能最大得点の27点を稼ぎ出した。

 一方のプールAでは、午前の勝者アウグスト・ファーフス(ヒュンダイ・ヴェロスターN ETCR/ヒュンダイ・モータースポーツN)とマティアス・エクストローム(セアト・クプラ e-Racer/ゼングー・モータースポーツXクプラ)の勝負が過熱し、バトル2の直接対決で先行してフィニッシュしたファーフスに対し、スチュワードは「ターン4での接触に対して全面的な責任を負う」との判断を下しエクストロームが勝者に。

 その波乱を尻目に、このラウンドからオリバー・ウェッブの代役としてシリーズデビューを飾ったルイジ・フェラーラとの陣営内バトルを制したフィリップ・エング(アルファロメオ・ジュリアETCR/ロメオ・フェラーリ・M1RA)が、自身のデビュー戦となった前回のコペンハーゲン戦同様にプールA首位で初日を終えることとなった。

開幕戦の初代勝者でもあるミケル・アズコナが、初日中間リザルトで獲得可能最大得点の27点を稼ぎ出した
マティアス・エクストローム(セアト・クプラ e-Racer/Zengő Motorsport X CUPRA)との勝負が過熱し、ペナルティを課されたアウグスト・ファーフス(ヒュンダイ・ヴェロスターN ETCR/Hyundai Motorsport N)
「僕らにパフォーマンスがあることを再び証明できた」と、これが2戦目のフィリップ・エング(アルファロメオ・ジュリアETCR/Romeo Ferraris-M1RA)

■「マシンの感触が良く、最後はリラックスすることができた」と勝利のアズコナ

 明けた日曜午前のタイムトライアルは、プールAではエクストロームが、プールBではアズコナがそれぞれ最速タイムを叩き出し、クプラ陣営が両プールそれぞれのポールポジションを獲得。

 しかし、スーパーファイナルAではもうひとつのハンガリー“支援”チームであるロメオ・フェラーリ-M1RAの逆襲にあい、コペンハーゲンでの週末最多得点者エングが、エクストロームを破り72点を獲得。この時点で暫定首位に躍り出た。

 一方、スーパーファイナルBの勝負に臨んだアズコナは、1コーナーこそホールショットを奪ったものの、追い縋るヒュンダイのベルネイやルカ・フィリピのアルファロメオに最終セクターで並ばれ、一時リードを奪われる厳しい展開に持ち込まれる。

 しかし、ホームストレートでクプラの優位性を立証したアズコナが首位を奪還すると、続く1コーナーのブレーキング競争で2台は接触。クプラはなんとか先頭を維持したものの、マシンにダメージを負ってしまう。

 さらにその背後では、同じくクプラをドライブする地元出身ドライバーのダニエル・ナジー(セアト・クプラ e-Racer/ゼングー・モータースポーツXクプラ)も肉弾戦を展開し、フィリピのアルファロメオとボディワークを破損させながらのバトルを繰り広げる。

 するとバリアを擦りながら応戦したアルファロメオのカウルが左リヤタイヤをカットし万事休す。レース後にはこの接触のペナルティとして、3位ナジーに20ポイント剥奪が言い渡された。

 波乱満載のヒートは最終的にベルネイを抑え切った満身創痍のアズコナ勝利でフィニッシュを迎え、タイムトライアルのボーナスも加えて週末に獲得可能な最大得点の77ポイントを加算し、ランキング3位に浮上してハンガリー戦を終えている。

「タイムトライアルとスーパーファイナルでは、JK(ジャン・カール・ベルネイ)が僕のリヤバンパーにとても近く、あまり快適ではなかった。だから、かなり早い段階でパワーアップを多く使用する必要があると感じていた。マシンはとても感触が良く、最後は少しギャップを作ってリラックスすることができたよ」と、シリーズ初2度目の“King of the Weekend”獲得のアズコナ。

 これでランキング首位のエクストローム以下、5位のバプティスタまでタイトル獲得の権利が残されたETCR初年度シーズン。世界初のオールエレクトリック・マルチブランド・ツーリングカーのタイトルは10月15~17日の最終戦、フランス・ポー-アルノー“E-サーキット”で決することになる。

安定感が光るマティアス・エクストローム(セアト・クプラ e-Racer/Zengő Motorsport X CUPRA)は3位で終え、ランキング首位をキープ
地元出身のダニエル・ナジー(セアト・クプラ e-Racer/Zengő Motorsport X CUPRA)もバトル2で勝利するなど速さは見せた
初年度シーズンで優位に戦いを進めているZengő Motorsport X CUPRA(ゼングー・モータースポーツXクプラ)

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