【追う!マイ・カナガワ】ピンクのバッタ見~つけた 小学生歓喜、でもどうしてピンク色?

ピンク色のクビキリギスを捕まえた中邨康太君

 「息子がピンク色のバッタを自宅の庭で見つけました。調べてみたけれど、なぜピンク色なのか分かりません」。神奈川新聞社の「追う! マイ・カナガワ」取材班に、小学3年生の保護者から疑問が寄せられた。時々発見されているピンク色や赤色のバッタは何なのか。専門家に聞いてみた。

 ピンク色のバッタを21日に発見したのは、神奈川県茅ケ崎市に住む中邨(なかむら)康太君(8)だ。

 「庭の水道の所で見つけました。いつも見るバッタと違くてビックリした。聞いたことはあったけど見るのは初めて。かわいいと思う。どうしてピンクなのか知りたい」とマイカナに感想を寄せてくれた。

◆体の色素欠如?

 県立生命の星・地球博物館の苅部治紀主任学芸員(昆虫分類学)に写真を見せると、バッタは「クビキリギスの幼虫」と教えてくれた。バッタよりも触覚や後ろ足が長く、全体的に細長いのが特徴だ。

 通常は緑色というが、どうして赤やピンクになるのか?

 苅部さんは「体の特定の色素が欠如するために、起こる現象とされています。実物に出会う機会は少ないけれど、県内でも報告はあります」と解説する。

 本紙では2018、19年に横浜や藤沢でピンク色のバッタが発見されたことを報じている。今年は埼玉や福井でも、ピンク色のショウリョウバッタやマダラバッタが出たことがニュースになっている。

◆目立つ故の“悲劇”も

 ピンク色のクビキリギスの繁殖に日本で初めて成功した千葉県立農業大学校の清水敏夫准教授にも話を聞いてみた。

 清水さんによると、クビキリギスは緑と茶、ピンクの色素を持っているが、突然変異でピンク色が強く出ることがあるという。最新の研究では、ピンクに生まれても緑に変異する場合もあると分かってきたが、詳しいことはまだ解明されていない。

 「100匹いたら、1~2匹はピンクになる。色が目立つので、人間が見つける前にだいたい鳥が食べてしまう」と清水さん。鳥などに攻撃されて足が欠損していることが多いという。

 「ピンクになる理由は分からないことが多い。ぜひ、身近な生き物を子どもたちが研究して、将来の昆虫学者が生まれてほしい」

 康太君どうですか?

◆博物館に一報を

 ピンクや赤のバッタは、時折発見されていることが分かったが、「狙って捕れるものではない」と苅部さんは言う。では、幸運にも見つけることができたら、どうすればいいのか。

 苅部さんは「飼育して観察してもいいけれど、昆虫飼育に慣れてないと世話は難しい。標本保存し、将来の研究に役立てられるかもしれないので、捕まえたら博物館に一報を」と呼び掛けた。

 康太君のクビキリギスは透明のケースで観察した後、庭に逃がしてあげると元気に跳ねて行ったという。

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