森&山川離脱の窮地で… 西武に勇気を与えるベテランと若手が融合した勝利

西武・辻発彦監督【写真:荒川祐史】

まず存在感を示したのは栗山と中村の最年長コンビ

■西武 3ー0 ソフトバンク(26日・メットライフ)

西武は26日、本拠地・メットライフドームで行われたソフトバンク戦に3-0で勝利した。チームトップでリーグ2位の打率.327をマークしている森友哉捕手と主砲の山川穂高内野手が「特例2001」で登録を抹消される窮地で、代役選手らの活躍で白星を掴み取った。

衝撃が走ったのは、この日の試合前のことだった。山川の個人契約マネジャーが新型コロナウイルスの陽性判定を受けた。山川と森が濃厚接触者となる疑いがあるため登録抹消に。特例で10日間を待たずに再登録が可能とはいえ、リーグ5位に低迷するチームにとって大きな打撃となることは間違いなかった。

そんな中で、まず存在感を示したのはチーム野手最年長コンビの栗山巧外野手と中村剛也内野手だった。これまで森が務めてきた「3番」に入った栗山は初回2死走者なしで、ソフトバンク先発の左腕・笠谷から右前打。通算2000安打の大記録まで、あと9本とした。すると続く中村が右翼フェンスをギリギリ越える先制の11号2ラン。栗山はベンチで中村に「もっと飛ばさな。全力で走ったわ」と笑顔で声をかけた。辻発彦監督は「ベテラン2人が挙げた2点が大きかった」と感嘆した。

森の代役としてスタメンマスクを被った岡田が3点目の適時打

執念がにじみ出たのが、4回に奪った3点目だ。森、山川の代替指名選手の1人として1軍に昇格し「6番・一塁」でスタメンに名を連ねたドラフト6位ルーキーのブランドン内野手が死球で出塁。続く川越誠司外野手はカウント1-2と追い込まれながら、ボール気味の低めのスライダーにバットを合わせ中前へ運んだ。

こうして得た無死一、二塁のチャンスに、森の代役として先発マスクをかぶった岡田雅利捕手が、同じくカウント1-2から外角高めの速球に食らいつき右前適時打。森にとって大阪桐蔭高の6年先輩に当たる岡田は「もう必死のパッチです。必死です、それだけです」と汗を拭った。今季4本目のヒットはチームにとって値千金だった。

守っては、3年目・20歳の渡邉勇太朗投手がプロ入り後2度目の先発マウンドに上がり、5回4安打無失点。前回登板の今月15日・楽天戦に続いて責任投球回数を全うすると、6回から森脇亮介投手、平井克典投手、増田達至投手、平良海馬投手が1イニングずつを抑え、計5人による継投で完封リレーを成し遂げた。「中継ぎ陣の調子は上がってきているから」と頷いたのは辻監督だ。無失点の渡邉を5回69球で降板させた判断を含め、采配が的中。岡田の好リードも見逃せない。

辻監督も目を細める勝利「みんなが仕事をしっかりやってくれたから」

「それ以外にも、守りや送りバントなど、みんなが仕事をしっかりやってくれたから、今日の勝利があったと思う」。指揮官がしみじみとそう振り返った通り、5回の守備では先頭・今宮の痛烈なライナーを一塁手のブランドンがジャンピングキャッチ。7回にも今宮の右中間への飛球を、右翼手・川越がランニングキャッチした。攻撃では、得点に直接結びつくことはなかったものの、送りバントで地道に得点へ近づく場面が2度あった。

今季の西武は開幕直後から主力に故障者や新型コロナウイルス陽性者などが続出し、レギュラーで戦線を離脱したことがないのは森と中村くらいだった。その森までいなくなったこの日、残った選手たちが総力を挙げてもぎ取った白星は、チームに勇気を与える。

試合後、森と山川がPCR検査の結果、陰性となったことが発表されたが、戦列復帰の見通しは未定。「今年はずっと故障者が出る中で、若い選手が経験を積んでいる。全員で戦うことに変わりはない」と辻監督。控え選手が力をつけているのは間違いない。これが戦力の底上げという果実となり、今季の残り試合、そして来季へつながると信じたい。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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