プジョー9X8開発チーム、トラックテストに向かう段階で「エラーは許されない」/WEC

 プジョーのル・マン・ハイパーカー(LMH)プログラムのテクニカルディレクターは、年内に予定されている『プジョー9X8』のトラックデビューに向けて準備が進められている、同車のパワートレイン・テストスケジュールに「失敗の余地はない」と語っている。

 プジョーは現在、2022年のWEC世界耐久選手権に参戦する予定であるハイブリッド・プロトタイプレーサーのパワートレイン・ダイナモメーターテストを行っている。

 プロジェクトのテクニカルディレクターを務めるオリビエ・ジャンソニは、プジョーが今年12月にロールアウトを目標としているため、忙しくやりがいのあるプレ・トラックテスト・フェーズになっているとSportscar365に語ったが、プログラムは予定どおりに進行しているという。プジョーは来月中旬に『9X8』用の最初のモノコックを「予定どおりに」受け取る予定だ。

「LMHはまったく新しいレギュレーションであり、事前調査には膨大な時間を要した」とジャンソニは述べた。

「プレ・コンセプトの段階は、おそらく今後数年間で違いを生むだろう」

「事前テストの時間を最小限に抑え、できるだけ早くトラックを走れる状態にする必要がある。したがって、いまの段階でエラーの余地がないことは明らかだ」

「我々は過去18カ月間、このようなスケジュールで仕事をしてきたが、それは非常にタフなものだった。しかし、当初から2022年にレースを行うと言ってきた。それを達成するためには、基本的に他の解決策はなかった」

 プジョーの9X8パワートレインテストは3月にスタートし、500kWの2.6リッターV6ツインターボ内燃機関で最初のダイナモ走行が実施された。

 以来、プログラムは内燃機関の耐久テストに移行し現在も継続されている。プジョーは今後、200kWの電動モーターをはじめとするパワートレインの要素を追加していき、ハイブリッドユニット全体を構築していく予定だ。

“ハイブリッド4”と呼ばれるこのパワートレインは、120km/h以上の車速域で電動モーターが使用されているときに、エンジンが自動的に300kWの低出力に切り替わり、車両全体の出力がLMH規定の最大500kWを超えないように制御される。

 電動モーターは検証プロセスの次の段階であり、まもなくテストが開始されるという。ジャンソニは、プジョーが「複数のエンジンと、複数のダイノ」を使用していると述べた。

「私たちは、すでに計画されていたエンジンの進化を実現した」と語った同氏。

「組み立てとテストを行っている。現在はフロントの組み立てに着手しており、電気エンジン(MGU)とフロントギアボックスを受け取って、それらを組み合わせてテストをしている。これが次のステージだ」

「その後はギアボックスとエンジンを一緒に組み立て、リヤのパワートレイン・ダイノでテストを実施する。そして最後に、走り出す数週間前に四輪駆動システムを搭載するんだ」

「最初に各部分を別々にテストし、次にそれらをまとめて全体としてのテストを開始する。我々はそれらのテストを次々に行っている」

「エンデューロ・ダイノテストは数日間中断せずに行う完全な検査ではない。プロセス、リグ、ダイノを含め、すべてが新しくなった。すべてがテストされ、スピードが上がっている」

■現時点でデビュー戦を公表できない理由

 プジョーはまた、トタルエナジーズ社の子会社であるサフト社と協力して、モーターに電力を供給する900Vの車載バッテリーを開発している。このバッテリーは、ブレーキング時に運動エネルギー回収システムによって充電される。

「サフトはセルの開発を行っているため、その準備はできている」と語るのは、トタルエナジーズ・モータースポーツ・コーディネーターのロメイン・オーブリー。

 彼は、「我々は生産を開始しており、プジョースポールとトタルエナジーズが共同開発したバッテリー・マネジメント・システムを完成させなければならない」とSportscar365に語った。

「これまでのところ、すべてにおいてグリーンライトが灯っている。開発は順調に進んでおり、2年前にプジョーと決めたスケジュールは守られている」

 ステランティス・モータースポーツの責任者としてプロジェクトを監督するジャン-マルク・フィノーによると、プジョーは9月末から10月初旬にかけて、エンジンとフロントMGUを一緒にダイノで走らせることを計画しているという。

「ICE(内燃機関)と電動モーターを別々にテストし、その両方をテストした後にベンチテストを行う」と彼は言った。

「ベンチテストでは、システムがクルマに組み込まれているため、特定の情報や数値を発見するために特性評価や測定など、すべてのチェックを行う」

「私たちにとって(プレ・トラックテスト)開発プログラムの時間を短縮することは、クルマのテストを開始するまでの時間を短くするために最善の方法なんだ」

「万が一、問題が発生して一部のパーツを再設計する必要がある場合、これがチャンピオンシップに参加する正確な日付を今すぐに約束できない理由だ」

「それは、この規則の特殊性によるものだ。クルマがホモロゲーションされると、5年間にわたって開発が凍結されることになる」

プジョー9X8の走行イメージ

 2022年のWECは3月18日にアメリカ、セブリング・インターナショナル・レースウェイで開幕する予定だ。第90回ル・マン24時間は6月11~12日予定されている。

 プジョーのジャンソニは、ダイノテストは9X8がトラックデビューするまで継続されると説明した。彼によれば、最初の走行はヨーロッパで行われる予定だ。

「それはおそらく、私たちがテストカーを走らせ始めるのと同じ時期になるだろう」とジャンソニ。

「理想的なのは、エンジンだけでなくパワートレイン全体のテスト行うことだ。システム全体をテストするため、実際に(トラック)テストを行うところまで拡張したいと考えている」

「テストカーを走らせながら、同時にダイノで別のエンジンやギヤボックスを使ってテストを行うことも可能だ」

 またシミュレーションテストも、プジョーと契約している7人のドライバーたちによって2021年のレーススケジュールに合わせて継続して行われている。

© 株式会社三栄