「的が絞れない」敵将も脱帽 西武20歳右腕に感じる底知れないポテンシャル

ソフトバンク戦に先発した西武・渡邉勇太朗【写真:宮脇広久】

ソフトバンク工藤監督「分からないと言っていた」

■西武 3ー0 ソフトバンク(26日・メットライフ)

大物の予感を漂わせている。プロ3年目で20歳の西武・渡邉勇太朗投手が26日、本拠地メットライフドームで行われたソフトバンク戦に先発し、5回2安打3四球無失点に抑え、2勝目(2敗)を挙げた。15日の楽天戦でプロ初先発初勝利。中10日で迎えた2度目の先発でも底知れない潜在能力をうかがわせた。

ソフトバンクの工藤公康監督は試合後に「ウチのバッターに聞いたら、フォークなのかスライダーなのかわからない(球種があった)と言っていた。的が絞れなかった」と語った。渡邉とは6月30日にもリリーフで1イニング対戦していたが、まだ実像をつかみ切れていないようだった。

191センチの長身から投げ下ろす速球は、この日も最速149キロを計測。さらに得意のカットボールをはじめ、スライダー、スプリット、カーブと変化球も多彩。1回にいきなり安打と四球で2死一、二塁のピンチを背負ったが、デスパイネを3球三振に仕留めて先制点を与えなかった。3球目は外角低めいっぱいに決まったスプリット。デスパイネは手が出なかった。

「味方の攻撃のリズムをうまく生み出せなかったのが反省点」

2点リードで迎えた4回には、1死からデスパイネの右前打を右翼手の川越が後逸し、得点圏の二塁に走者を置いた。それでも、中村晃をスプリットで遊ゴロ、アルバレスを外角高めのスライダーで左飛に打ち取り、粘り強さを見せた。ピンチにも表情ひとつ変えない度胸の良さが頼もしかった。

5回は初めて3者凡退で終え、この回限りで降板に。プロ初先発は5回76球、この日も69球に止まったが、まだ余力を感じさせる。辻発彦監督は「まだ行けたとは思うけれど、暑くて汗をかいていたし、下半身にちょっと張りもあったみたいだから」と降板理由を説明。少しずつイニング数を増やしながら、慎重に先発ローテの軸へ育てていくつもりなのだろう。

渡邉自身は「自分の仕事に集中して、とにかくゼロで抑えようという気持ちでした」と笑みを浮かべ、一方で「ストライクとボールがはっきりしていましたし、3者凡退で抑えることができたのは最後の5回だけで、味方の攻撃のリズムをうまく生み出せなかったのが反省点。次はその点を意識して調整し、もっと長いイニングを投げたいです」と課題を挙げた。

今季の西武は故障者続出で5位低迷中だが、高橋光成投手、今井達也投手に続き、この若武者が一本立ちするなら、非常に意義深いシーズンになる。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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